個人投資家にとって大きな楽しみとなる「配当」や「株主優待」。3月や9月、12月などに権利確定日が設定される銘柄が多いが、ラジオNIKKEIでパーソナリティを務め、数々のアナリスト業務やコンプライアンス業務に従事する金融文筆家・田代昌之氏は、「11月に配当権利が確定する銘柄は要チェック」だと語る。
「9月と12月の谷間にあたる11月決算の銘柄は関心を寄せる投資家が少ないが、その分、掘り出し物が見つかるケースがあります。株主優待が充実し、高配当という優良銘柄が見逃されがちなのです。株価が急落して配当利回りが高くなっている銘柄や、純利益以上の配当を実施している銘柄(配当性向100%超)、赤字決算の銘柄は除外していくと、優良な11月権利確定銘柄が見えてきます」
そんな田代氏に11月権利確定の注目銘柄を挙げてもらった。なお、2024年11月の優待を獲得するには、権利付き最終日となる11月27日(水)までに取引を済ませておく必要がある。
QUOカードが増える理由
「配当利回りが高い銘柄では、ファーストブラザーズ(3454)、タマホーム(1419)、ファーストコーポレーション(1430)の3銘柄が挙げられます。いずれも不動産会社で配当利回り5%台後半程度と高い。なかでもファーストブラザーズは今2024年11月期より、直前期の業績連動制での中間配当実施方針を掲げており、好感が持てます。業績が悪いと配当を出さないということになりますが、今年7月に中間配当を行なうことを発表。株価も堅調に推移しており、利回り5%台後半は11月権利確定銘柄でもトップクラスです」(田代氏。以下「」内同じ)
ファーストブラザーズが投資運用事業であるのに対し、住宅販売や不動産販売を展開するのがタマホーム。同社も配当利回り5%台と、11月権利確定銘柄の中でも高めに設定されている。同社の株主優待は2019年に優待品の選択制からQUOカードに変更された。
「優待にQUOカードを選ぶ企業はここ数年で激増しました。東証より要請されている株主還元で最もやりやすい形であるほか、外国人投資家にとっては現物が送られてくるよりQUOカードのほうがはるかに有益ということも聞いたことがあります。なおQUOカードの権利を獲得するためには500株以上でかつ1年以上の保有が条件。購入前に必要単元数を企業の公式ウェブサイトなどで確認しておきましょう」
総合建設コンサルタントのオオバ(9765)も単元株数は100株だが、優待は500株以上で保有期間1年以上が条件となる。
「同社は社会貢献活動の一環として、障がい者の働く場創出と工賃アップを目指し、2012年に全国初の福祉チョコレート工房を設立しています。優待はQUOカードの他に、この工房で作られたチョコレート菓子。ただし、チョコレートの優待を受けるには2500株の保有が条件とハードルがやや高めですが、障がい者に対する会社の考え方を明確に示していることは立派なことだと思います」
「自社商品のファンになってもらう」ことが狙い
サーラコーポレーション(2734)やアステナホールディングス(8095)も500株以上の保有者を対象とするが、いずれも業績は堅調で株主還元策に力を入れているという。
自社商品あるいは自社サービスを優待にしているラクト・ジャパン(3139)、自社アプリの会員専用サービスを無料で利用できるウェザーニュース(4825)にも田代氏は注目。「企業が投資家に自社のファンになってもらうために行なう、本来のあるべき優待の姿」と田代氏は評価する。
「バイク買取販売店の『バイク王&カンパニー』(3377)の優待は同社で126ccのバイクを買うと3万円の割引となります。1株が約500円なので、約5万円で保有できて、3万円の割引です。優待利回りで計算すれば60%ほどとなり、バイク好きには嬉しい優待といえるでしょう」
企業の業績予想や開示される情報、権利獲得の条件などのチェックを忘れずに、値動きを慎重に見極めながらベストな銘柄を選びたい。
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【プロフィール】
田代昌之(たしろ・まさゆき)/1979年生まれ、北海道出身。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経て金融情報会社・フィスコに入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務のほか、暗号資産交換業者や証券会社の経営に従事したのち独立。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めるほか、経済誌への寄稿も多数手がけている。
取材・文/小野雅彦