「手取り減」と「賃上げ抑制」の二重のしわ寄せ
では、サラリーマンの手取りはどれだけ減らされてきたのか。
掲載した図(後編記事参照)は、40~44歳の男性の平均的水準である年収600万円のサラリーマン(妻と子供1人)の手取り額が約20年間でどう変わったかを試算したものだ。
一目瞭然なのは、給料から天引きされる厚生年金、健康保険、介護保険などの社会保険料の大幅アップだ。
小泉純一郎政権で年金改革が行なわれる前の2003年には社会保険料率(労使合計)は給料の約24.4%だった。しかし、年金改革と称して厚生年金保険料が段階的に引き上げられて2012年には約27.8%、さらに安倍晋三政権下で「社会保障と税の一体改革」が実施され、現在(2024年)は30.9%へと負担が重くなった。
年収600万円のサラリーマンが額面の給料から天引きされる社会保険料の合計額は2003年の約72万円から2012年には約82万円、2024年は約92万円へとハネ上がっている。その分、手取りはどんどん減っていった。
それだけではない。社会保険料は、原則労使折半で負担するため、企業は社員とほぼ同額を人件費として別途負担している。
そのため、企業の社会保険料負担が増えると、人件費が増加して社員の給料を上げる余裕がなくなる。
社会保険料率アップでサラリーマンは「手取り減」と「賃上げ抑制」という二重のしわ寄せを受けることになったのだ。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年11月22日号