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レプリコンワクチン製薬会社の言い分

【議論沸騰】レプリコンワクチンをめぐる不安や疑問に製薬会社が答えた「遺伝情報に影響はないのか」「mRNAが暴走するのではないか」「シェディングするのか」

レプリコンワクチンの製造販売元のMeiji Seikaファルマが取材に応じた

レプリコンワクチンの製造販売元のMeiji Seikaファルマが取材に応じた

 10月1日、高齢者の新型コロナワクチン定期接種が始まった。そのなかで日本が世界に先駆けて承認した「レプリコンワクチン」をめぐって様々な議論が巻き起こっている。製造・販売を担う製薬会社は不安や疑問にどう答えるか。【前後編の後編】

 レプリコンワクチンを批判し続けたのが、立憲民主党の原口一博衆院議員だ。自身のSNSや動画投稿サイトなどを通じて「生物兵器まがい」などと断じる投稿を繰り返し、“反ワクチン”の姿勢を鮮明にしている。

 Meiji Seikaファルマ(以下、Meiji)は原口氏の主張を誹謗中傷だとして10月初旬に警告書を送付したが主張は変わらず、Meijiは10月末、名誉毀損での「提訴を検討している」と発表。原口議員のどんな言動が名誉毀損に当たると考えているのか。取材を申し込むと、広報担当者らが対面で応じた。

「ワクチンの有効性と安全性に関しては、当然、懸念をお持ちの方もいらっしゃいます。そうした方と科学的根拠に基づく議論をすることはむしろ健全なコミュニケーションだと考えます。

 しかし、原口代議士は公の場やSNS上でレプリコンワクチンに関して『731部隊』『生物兵器』『3度目の原爆』『(臨床試験は)殺人に近い』などと繰り返し表現されており、私どもとしては名誉を著しく毀損されたと捉えざるを得ません」

 どんな経緯で「提訴」という決断に至ったのか。

「衆院選前には立憲民主党幹部の方に『原口先生の言動に困っており、このまま続けるなら名誉毀損で訴えざるを得ない』と伝え、原口代議士に警告書を送付して返事をもらいましたが、それは今後もご自身の信念に基づき発言されるとの趣旨でした。選挙公報ではレプリコンワクチンについて『モルモットにされている』と書かれた。そうした経緯もありやむにやまれず、このような方法を選ばざるを得ませんでした」

 同社が懸念したのは、原口議員が持つ“影響力”の大きさだという。

「Xで37万人のフォロワーを持つ原口代議士の発信はあっという間に世間に広がります。レプリコンワクチンを『生物兵器』『原爆』とみる誤解が拡散した結果、コスタイベの接種の予約を受けていた医療機関が朝から晩まで電話で激しい抗議を受けた。なかには『殺人者!』と言われ、接種を断念せざるを得なくなった先生もいらっしゃいます」

 そうした妨害行為により、定期接種にも影響が出ているという。

「厚労省に報告した供給可能数量は427万回分ですが、10月1日以降の出荷数(非開示)はその数字にはほど遠い。妨害行為の影響がなくなれば、もう少し広く使っていただけると思います。基本的に、どのワクチンを打つかは主治医と相談したうえで被接種者の方が判断されますが、レプリコンワクチンがそもそもの選択肢から外れてしまっている状況は、私どもとしては非常にもどかしい」

「悪魔の証明のような話」

 多くの人が不安視する「遺伝情報に影響しないか」「mRNAが暴走してスパイクタンパクを作り続けるのではないか」「シェディングするのではないか」といった疑問にはどう答えるか。

「mRNAがDNAに組み込まれることはなく、人の遺伝情報や遺伝機構に悪影響を及ぼすことはありません。体内でスパイクタンパクが無限に作られるのではないかとの指摘もあるが、私どもの実験では31日後にはほぼ消滅することが確認されています。ウイルスの一部分であるスパイクタンパクしか使用せず、感染性のあるウイルスを作る機能はないため『シェディング』もあり得ない。これらが起きないと証明しろというのは『悪魔の証明』のような話です」

 また日本で初めて接種が進められることに不安を抱く人は多い。

「最初に承認された背景には、政府が安全保障の観点から自国でワクチンを用意できるように対策したこと、できるだけ審査期間を短縮し薬事承認を迅速化したことがある。これまで『ドラッグロス(海外で使用される薬が利用できない状態)』が問題視された日本で、世界に先駆けて承認されたことは誇らしいことです」

 自社の営業部門の匿名メンバーが出したとされる書籍についてはどうか。

「当社の社員が関わり、ワクチンを売りたくないと思っているとすれば大きな問題。社内外のメンバーによるチームを立ち上げ現在調査中です。目的は犯人捜しではなく、営業部門の社員が良心の呵責に悩まされていないかなどを確認するためです。

 ただ、社内のエンゲージメント調査では今年、営業部門のモチベーションが大きく上がっていた。それはレプリコンという画期的なワクチンを提供できることにやりがいを感じている結果だと捉えています」

 提訴の意向に対して、原口事務所は「訴状などが届いていないので、こちらから申し上げることはありません」と回答。ワクチンの安全性に、不安な気持ちを抱くのは自然なことでもある。レプリコンワクチンをめぐる議論は、そうした不安に正対する建設的なものになっていくだろうか。

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※週刊ポスト2024年11月22日号

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