清掃先の会議室で掃除機をかけながらこっそりとラジオたんぱに耳をそば立てると、先ほど150円高だった日経平均は350円高になっていた。掃除機をかけている間に、自分の資産は吸い取られていた。投機筋の仕掛けだったようだ。
オプションの吸引力は強力だ。わずかな値動きだけで簡単にお金が吸い取られていく。しかも、ワラントやオプションで失敗しても、「投機的な動きが入ったせいだろう」とその原因を突き詰めることがなく、簡単にスルーしてしまうから、いつまで経っても成績が安定しない。
株は違う。株価が暴落したら理由がある。決算書やニュースを見れば答えがわかる。
株で負ければ将棋で負けたのと同じで定跡書の研究が足りず、詰め将棋を解いた数が足りず、要は努力が足りていなかったのだと、悔しさが残る。全人格を否定された気分になる。
しかし、オプションで負けても軽いノリで「次、行ってみよ~」と思えてしまう。
この年には日経225オプションで200万円、さらにワラントでも30万円ヤラれ、合計230万円がマネーゲームの掃除機に吸い取られた。ほぼ2年分の貯蓄だ。それだけヤラれても、心には(おかしな方向への)前向きさが残る。この気分は何かに似ている。
パチンコだ。いくら負けても「あと1000円だけ」「もう少しで出るから」と、軍艦マーチに引き寄せられていく、あの感覚だ。