実質的な「クレカの現金化」が可能になってしまう
また、キャッシュレス決済の導入への障壁となっているのが、パチンコにおける“換金”だ。
パチンコ・パチスロでは、いわゆる“三店方式”と呼ばれる形で、実質的な出玉の換金が可能となっている。現状では、客が出玉を交換して得た特殊景品をホール近辺にある“古物商”である景品交換所で買い取ってもらうことで、現金を得ることができる。景品交換所が買い取った特殊景品は、第三者である卸売業者を介して、再びホールへ戻っていく。この構図において、ホール、景品交換所、卸売業者が、それぞれ別の業者として関わることで、賭博にならない合法的な景品の流通ができるというのが、“三店方式”だ。
「三店方式は合法的ではあるとはいえ、世間的にはグレーなものと見られています。キャッシュレス決済の事業者としては、そういったグレーと見られる構造のなかに組み込まれることへの抵抗もあるでしょう。また、キャッシュレス決済で得た出玉を換金するというのは、事実上の“クレジットカードの現金化”にもつながります。クレジットカードの利用規約に抵触する可能性もありますし、不正な形で利用されるかもしれないという点も問題視されています」(藤井氏、以下同)
設備投資によるホールへの大きな負担
パチンコホールでのキャッシュレス化が進めば、非現金派のユーザーを呼び込めるかもしれないが、ホール側にはさまざまな負担がかかるという側面もある。
まず、ホールにおける設備投資の問題がある。現在使われている現金専用のサンドだけでなく、キャッシュレス決済に対応したサンドの導入が必要になる。昨今、売上が減少して厳しい状況に追いやられるホールが多いなか、キャッシュレス化のための新たな設備投資ができない店も少なくないはずだ。さらに、設備投資がキャッシュレス化で増える売上に見合うものかどうかを考えた末に、導入見送りを選択するホールも出てくるのではないか。
また、クレジットカードで決済した場合、毎回手数料がかかることとなるが、それを負担するのもホールとなる。その手数料がホールの経営を圧迫するであろうことは想像にたやすく、そのしわ寄せが“出玉の削減”という形でユーザーに転嫁される可能性もある。キャッシュレス化によって、ユーザーが最も強く求める“出玉でのサービス”が損なわれるならば、逆にユーザー離れが進むことも考えられる。