キャッシュレス化が進み、現金を持ち歩かない人も増えているなか、いまなおキャッシュレス決済が利用できないのがパチンコホールだ。“キャッシュレス派”の新規ユーザー獲得のために業界内ではキャッシュレス決済導入を推進する動きもあるが、実現に向けたハードルは高い。またユーザーの間でもさまざまな意見があるようだ。パチンコホールにおけるキャッシュレス化について、業界側の事情を紹介した前編記事に続き、後編記事ではユーザーたちの生の声を紹介しよう。【前後編の後編】
パチンコホールのキャッシュレス化に向けて、もっとも大きな障壁の一つが、ギャンブル依存症対策だ。パチンコ・パチスロ業界では、過剰なのめり込みを防止するため、店内に依存症に関する啓発ポスターを掲示するほか、パチンコ・パチスロの液晶画面内でも、のめり込みに対する注意喚起のメッセージを表示するなど、さまざまな施策がなされている。あくまでもパチンコ・パチスロは自分で自由にできるお金の範囲内で楽しむべきものであり、借金をしてまで興じるのはもってのほか。業界全体でそうならないようなメッセージを発信し続けている。
一方で、たとえばクレジットカードと紐づいたキャッシュレス決済は“後払い”であるため、事実上の借金とも言える。そういったキャッシュレス決済がパチンコホールで利用できるようになれば、結果的に借金をして遊技することへのハードルが下がってしまうことにもなりかねない。仮に、パチンコホールでキャッシュレス決済を導入するにしても、多額の利用を抑制するような仕組みが必要となるだろう。
実際に、パチンコでのキャッシュレス決済導入に対して「怖い」と感じているユーザーもいる。都内に住むパチンコファンの会社員Aさん(30代男性)はこう話す。
「以前、クレジットカードを使って買い物をしまくって、いざ引き落としのときに銀行残高が足りなくなってしまったということが何度かありました。どうしても『支払いは後だからどうにかなるだろう』という気持ちになってしまう。そういった自分からすると、もしパチンコでカード払いができるようになれば、際限なくどこまでも使ってしまいそうで怖いです。現金で遊んでいる限り、手持ちがなくなれば終わりだし、そこから借金してまで打とうとまではなかなか思わない。パチンコのキャッシュレス化は、かなり恐ろしい誘惑です」
パチンコホールでのキャッシュレス決済を導入することになった場合、利用できる金額を制限するべきだとの議論もある。パチンコ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏はこう話す。
「1日3万円以内といった程度の利用限度額を設定する必要があるのは当然ですが、問題なのが、複数のキャッスレス決済サービスを利用しているユーザーであれば、その限度額が何倍にもなってしまうということ。限度額を設定したけど、事実上は青天井といったようなことになる可能性もあるわけです。さまざまな事象を想定して、しっかりした依存症対策ができるような構造を作り上げたうえで、キャッシュレス決済を導入しなくてはならない。そう考えると、やはり実現は簡単ではないと思います」