少々、複雑な気持ちになったテストドライブ
そんな走りで1点だけ気になる点といえば、テスト車両のサスペンションがまだ馴染んでいないせいかもしれませんが、ちょっぴり一般路で跳ねる感じがあります。気になってタイヤをチェックすると18インチが装着されていました。これがもし17インチだったらもう少し落ち着くのでしょうか。それとて、決定的なウイークポイントではありません。ボディのかっちりとしたフィールはいかにも路面をかっちりと掴みながら走るドイツ車的でもあり、個人的には好きな味です。しなやかさではフレンチやイタリアンのような心地よさは少し希薄ですが、一方で速度が上がるほどに安心感が増していく走りはドイツ車のスタンダードを十分にクリアしています。
走りの味わいをよくしているもうひとつに要因は1Lの直列3気筒ターボエンジンです。日本ではこれまでどおり、全グレードにこのエンジンが搭載されています。最高出力は116馬力で最大トルク200N・mというスペックです。このエンジンに組み合わされるのはデュアルクラッチギアボックスの7速DSGで、駆動方式はFF(前輪駆動)。そして今回のマイナーチェンジでエンジンの味つけが少し変更され、回転の上昇が軽やかになっています。街中での扱いにおいて、この軽さによってもたつくことも無く走れるのです。久し振りに重いEVとは違う、軽やかな走行感を存分に楽しめました。
また3気筒エンジンらしいノイズはある程度覚悟していたのですが、街中から郊外路までといった一般道では騒音も振動も良く押さえ込まれています。EV化の流れはもちろん大切でしょうが、これだけフィールのいいエンジン車、というか国産車にはマネのできない味わいのクルマを作れるのです。
もちろん高速道でもしっかりと流れに乗って走れます。強烈な加速感はありませんが、かと言って普通に加速して本線への合流もできますし、燃費のいい高速巡航もできます。
こうした走りの良さを実現した上に荷室も広く使いやすい。そして「アダプティブクルーズコントロール(ACC。全車速追従機能付)」をはじめとした予防安全も満載したコンパクトSUV。その価格は329万9000 円(TSI Active)~となっています。
価格の比較だけでいえばトヨタ・ヤリスクロスのX(ハイブリッド車 1.5L・2WD)が229万5000円(税込)で、その価格差は100万円ほど。確かに走りの質感は高いのですが、だからと言って「輸入車だから高くて当然……」とか「円安だから仕方ない」という言い訳は通用しないかもしれません。単純に「もうちょっと安かったら」という気持ちが湧きました。同時に、企業として適正な合理化をもっと進めていれば、現在のような状況を避けられたかも……。少々複雑な気持ちになったテストドライブでした。