専業主婦だったが住宅ローン返済のために正社員へ復帰
ところが現在、かつてなら専業主婦になっていたであろう高学歴の母親層がフルタイムで働く。日本全体が人手・人材不足なので、いったん仕事を辞めても今はいくらでも仕事に復帰ができる。
実際、2020年に取材をさせていただいた帰国生の母親・A子さんは、夫の海外赴任に帯同し、帰国したばかりで専業主婦だった。いわゆる駐在妻だったが、翌年から派遣社員として働きだし、その後、正社員になってバリバリ働いている。上の娘は帰国生枠で私立校に合格し、楽しそうに千代田区の女子校に通っている。
「派遣社員のままでいたかったんですが、マンションのローンもあるので、収入を増やさないと子どもを2人とも私立に通わせられません」とため息をつく。今後はたとえ夫が転勤になってもついていかない予定だという。
10年以上前に購入した都心のタワーマンションのローンは夫ひとりの収入で支払い続けられない。資産価値が目減りしない物件を選んだ結果、予算オーバーの物件を買うことになったという。
「この子は開成に入れる」と確信
A子さんは営業職なので忙しいが、一方で、子どもに対してはガチ受験志向だ。彼女自身、四谷大塚に通って、伝統女子校に進学、慶應義塾大学を卒業し、外資系企業に勤め、仕事を通して今の夫と知り合った。
ようは勉強をして、学歴を得ることで今の生活を築いている。基礎学力や学歴があることで仕事にも復帰できたとも思っている。
そのため、子どもにも勉強をさせて、学力や学歴を与えたいと考えている。海外にいたときに親しくしていたママ友の息子が開成に通っているため、文化祭に息子を連れて行った。
「息子本人が“カイセイに入りたい!文化祭をやりたい!”っていうんですよ。だからできる限りのことはやってあげようと思いました」
海外にいた頃から公文式の算数をやらせていて、小学3年の段階で中学教材を学習していた。SAPIXが市販している算数パズルの問題集も夢中になって解いていた。難しい算数の問題もスラスラと解いていく息子をみてA子さんはこう思ったという。
「この子は開成に入れる」
そして、こう話す。
「開成の文化祭は規模が大きく、活気があります。でも、私が感心したのは生徒さんたちが一生懸命、焼きそばを作っていたことです。ほかの学校だと大抵は業者や保護者が焼きそばを作って売っているのに、開成は生徒が担当します。なんでも自分たちでやるカルチャーなんだなと思いました。息子には自立した人間になってほしいのでこういう学校に入れたいと思いました」
母親の想いと息子の希望が一致して、中学受験に向け戦闘態勢に入ったが、塾選びで悩む。
「私はそこまで精神力がある体力エリートではないから、仕事と中学受験のフォローを両立するのは無理です」