キャリア
変わりゆく中学受験の塾選び

Z会に早稲アカ、enaも参入、中学受験の難関対策特化型「少数精鋭エリート塾」が次々登場 一方で“通塾拒否”に至った生徒も

共働き世帯が増えるにつれて、中学受験塾のニーズも変化してきている(写真:イメージマート)

共働き世帯が増えるにつれて、中学受験塾のニーズも変化してきている(写真:イメージマート)

 中学受験で難関校を目指す子の家庭にとって、難関校対策の塾選びは重要な要素となってくる。その選択肢の一つに中小の「少数精鋭の難関校対策塾」がある。難関校対策に特化した塾にはどのような特徴があるのか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「変わりゆく中学受験の塾選び」。【全4回の第2回】

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 中学受験に臨む親には2種類のタイプがある。「なにがなんでも難関校」という「ガチ受験」の姿勢で挑むか、「学童代わりに塾に通わせて子どもに合った学校に入れる」というマッチング受験か。

 かつては高収入サラリーマンと専業主婦家庭が前者を選び、高学歴な母親たちは「子どもの受験こそが自己実現」という姿勢で戦闘態勢に入っていった。

 ところが今、その高学歴な母親層がフルタイムで働いて、住宅費や教育費を稼いでいて、子どもの受験に専念できない。しかし、彼女たちの多くは難関校に子どもを入れようと、ガチ受験をめざすから大変になっている。なぜなら、ガチ受験組御用達のSAPIXやグノーブルはテキストや授業は素晴らしいが、親のサポートが必要になることもある塾だからだ。

 もちろん、全部自分でやって御三家に入っていく生徒もいるが、その割合は多いとはいえない。ある大手塾の校舎の説明会では「うちを辞めていくのは生徒が挫折するのではなく、親御さんがある日突然ポキッと折れてしまう」と話していたという。

 一方で、「学童代わりになる面倒見のいい大手塾」は合格実績的にはガチ受験勢のママには物足りない。

「本当は派遣社員のままでいたかったけれど背伸びをして都心のマンションを買ったので正社員になりました」というA子さんは現在、外資系企業の営業職だ。息子は開成を目指している。

 彼女が塾に求めるのは、息子を開成に入れてくれる指導をしてもらえることと、面倒見のよさだ。その条件を満たすのが中小規模の難関校特化型対策の塾である。

 具体的にどんな塾が難関校対策が得意かつ面倒見もいいのか。たとえば最難関中学受験専門塾「Z会エクタス 栄光ゼミナール」、関西から進出した難関国・私立中受験専門スーパーエリート塾「希学園」、早稲田アカデミーの最難関中学受験専門塾「SPICA」などが知られるが、今年からenaが渋谷に「極」という難関校特化塾をオープンした。どこもしっかりと「難関校対策」と冠がついている。Z会、早稲田アカデミー、enaと大手教育産業が難関校対策に特化した塾ブランドを立ちあげているのだ。

 SAPIXや四谷大塚のような大手塾は中堅校対策もするが、これらの難関校特化塾は難関校対策に特化しているから入塾テストもそれなりに難しい。

 関西では、浜学園から独立した希学園が最難関対策の指導力にプラスして面倒見のよさで差別化をしていき、灘対策ではNo.1の塾になった。同じように東京の難関校特化塾も、王者SAPIXとの差別化のために面倒見のよさを付加しているようにみえる。

 どの塾も生徒の数も多くないため、プライバシーの都合上、具体的な塾名は伏せるが、これらのエリート塾のひとつの入塾テストにA子さんは小学生の息子を連れていった。

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