小池百合子・東京都知事は、お台場海浜公園に高さ150mに及ぶ世界最大級の噴水を建設する計画『ODAIBAファウンテン』(仮称)を発表した。都の花であるソメイヨシノをモチーフにした幅約250mの噴水を組み合わせて整備し、東京タワーなどの景観をバックに噴水ショーを展開するという。11月上旬には、総事業費26億円超という予算要求を計上した。
小池都知事が突如ぶち上げた巨大噴水計画には、物価高で苦しむ都民の血税が大量に流れ込むという。近世フランスで「噴水」は、国王たちが巨費をかけて宮殿の庭園に設置したことで「権力と贅沢の象徴」となったが、結局、贅沢三昧のフランス王は市民の怒りを買ってギロチン台に送られた。さて、小池都知事の噴水は、苦しむ市民の癒しになるのか、それとも、暴君の墓標となるのか。【前後編の後編】
現実味のない98億円の経済波及効果の試算
今年2月にスタートした都庁プロジェクションマッピング事業は、当初7億円の予算を計上していたが、蓋を開けてみれば、関連事業費も含めるとかかった費用は約17億円にのぼり、「ほかにお金の使い道があるのでは」と異論が噴出した。その教訓からか、巨大噴水プロジェクトについて、都は「税金を使用するのではなく特別会計(臨海地域開発事業会計)から費用を捻出する」と、“税金のムダ遣い”という批判をかわしているが、政治ジャーナリストの有馬晴海さんはここにも疑問を呈する。
「つまり、都が管理するお台場の土地を売却して、その利益を使うということでしょう。しかし、そもそもその土地を購入するのに使った費用は都民の税金も含まれているはず。それに都の事業で得たお金は、都の財政資金であり都民のものですから、この噴水がどのように都民の利益に寄与するかはしっかり説明する必要があります」
期待される経済波及効果について、都は98億円と試算。試算根拠を都に問い合わせると、得られた回答は「現状でお台場を来訪する人に上乗せして、年間2000万人の来訪者を見込んだもの」という。
「東京の代表的なランドマークである東京スカイツリー展望台ですら、開業から12年で5000万人程度。年間2000万人は、東京ディズニーランド、あるいは浅草寺に匹敵する観光名所にならなければ達成できないのでは。インバウンド需要があるとはいえ、東京への訪日客は、コロナ後のもっとも多いときで2000万人弱。その全員がお台場を訪れないと経済効果は得られない試算です。
そのうえ、年間約100億円と見込まれる経済効果を2000万人で割ると、1人約5万円を使うことになる。当然、施設利用や買い物だけでなくホテルなど宿泊施設の費用を計上しないとまかなえない金額ですが、すでに都内のホテルはまったくキャパオーバー。試算には現実味がない。
試算を行ったのは、元国交省所管の公益社団法人『日本観光振興協会』ですが、役員には不動産、航空業界、旅行会社などインバウンド需要で利益を甘受する企業の名前が並ぶ。結局、都民のためではなく企業のためと思われても仕方がない」(経済ジャーナリスト)
試算の実現性について、都は「複雑な計算のため回答できかねる」(港湾局担当者)とし、日本観光振興協会は「都で公表されている以上のものは守秘義務により、当協会からお出しすることはできない」(調査部担当者)と回答。本当に都にとって利となるのかその詳細は見えてこない。