重要なのは「AIに何をやらせるか」
ただし、生成AIにはコンピューターによる分析やシミュレーションにおいて昔から言われている「ギーゴ(GIGO=garbage in, garbage out)」問題がある。これは「ゴミを入れたら、ゴミが出てくる」、つまり「入力する情報が正しくないと、出力される情報も正しくない」ということだ。
したがって、これから重要なのは「プロンプト(Prompt)」の能力だ、となってきた。
プロンプトとは「促す・指示する」という意味で、IT分野ではAIとの対話においてユーザーが入力する質問や要求のことである。AIがユーザーの質問や要求に対して適切な応答や結果を生成するためには明確で具体的なプロンプトが必要だ。プロンプトが不適切だと、AIは誤った情報や望ましくない回答を生成してしまうからである。
そこで、企業ではAIに対して正しい質問をする「プロンプト・エンジニア」を大量に養成しようという動きが広がった。
しかし、2024年に入って前述したオープンAIのSoraやアドバンスト・ボイス・モード、グーグルのジェミニ、マイクロソフトのコパイロットなどが登場したことで、いまやプロンプト・エンジニアも必要なく、「理系」であれ「文系」であれ、文章や音声でAIに対して明確で具体的な質問さえできればよい、という時代になった。
さらに将来的には、ユーザーがプロンプトを入力しなくても、「目標」だけ設定すれば、AIがそれを実現するためのプランや道筋を考えて実行してくれるようになる、とも言われている。
つまり、AI活用にあたってはエンジニアや技術者である必要すらなく、より有効な解決策につながる質問や要求を含めた「目標」をAIに指示する──「AIに何をやらせるか」が、重要なカギとなってくるということだろう。
(大前研一・著『新版 第4の波』より一部抜粋して再構成)
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。新刊『新版 第4の波 AI・スマホ革命の本質』(小学館新書)など著書多数。