2024年春卒業予定の学生たちの就職活動が続いている。人手不足の傾向がある業界では、学生優位の売り手市場となっているが、巨大IT企業で広がっている大リストラに象徴されるように、自動化・機械化が進む業種ではいつ大規模解雇が起きてもおかしくない。そういった人材シフトを「第4の波」と規定した近著が話題になっている経営コンサルタントの大前研一氏が、これからのサイバー社会で求められる人材像を解説する。
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これからの「第4の波」=サイバー社会で活躍するのはどういう人材か。現在のAI(人工知能)革命は、かつて未来学者のアルビン・トフラーが提唱した農業革命=「第1の波」、産業革命=「第2の波」、情報革命=「第3の波」に続く「第4の波」である。「第2の波」=工業化社会では、教育現場に文部科学省主導の学習指導要領があり、答えのある教育で、先に生まれた者が教えるので「先生」と言われてきました。教育によって多数の均質な人材を生み出すことが求められ、30年前には世界の時価総額トップ10の中に日本企業が7社も入っていました。しかし、最近ではトップ10に日本企業は1社もなく、代わって中国・台湾企業が入るようになってきています。今の日本勢のトップはトヨタ自動車ですけれども、40位に入るのがやっとという状態です(図を参照)。
生き残れる仕事は「人間にしかできないこと」
サイバー社会というのは「考える教育」、すなわち答えは他人に教えられて覚えるものではなく、自分で考えて見つけるものです。そのためには、ティーチャー(先生)じゃなくてファシリテーター(促進者)が必要とされます。
それから、個別指導によって「尖った人材」を輩出することが求められています。尖った人材を生む方法は、個別指導以外にありません。だから、指導要領どおりに教えたら「一条校」と認定して国が授業料を補助してあげます、という今の日本の文科省のやり方は最悪です。