チャットGPTをはじめとする「生成AI」の進化は、ますます加速している。その進化は止まることなく、いずれ多くの分野で、人間の知能を凌駕する技術的特異点(シンギュラリティ)がやってくるとされている。そのとき、人間に求められる役割とは何なのか──。AIの進化に伴って、ますます焦点となっている“難問”について、最新刊『新版 第4の波 AI・スマホ革命の本質』が話題の大前研一氏が解説する。
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アメリカの人工知能開発企業オープンAIは2024年9月、生成AI(人工知能)の最新モデル「オープンAI o1(オーワン)」を発表した。
従来モデルの「チャットGPT」は、膨大な文字や画像のデータを読み込み、問いの答えとして最適と思われる文章を推測して速く生成するが、順序立てて論理的に考える数学分野は苦手だった。
一方、「オープンAI o1」は論理的に「熟考」し、数学や物理、化学、プログラミングなどの分野を得意とする。じっくり考える分、チャットGPTより答えを導き出すまでの時間は長いが、物理や化学、生物の専門知識を測る試験で博士号取得者の点数を上回り、高校生らが参加する「国際数学オリンピック」のアメリカ予選問題を解かせると、正答率は83%に達した(チャットGPTは13%だった)という。
さらに、オープンAIは同月、チャットGPTに、ユーザーの感情を読み取って人間同士のように自然な会話ができる新たな音声機能「アドバンスト・ボイス・モード」を加えた。その反応時間は「平均0.3秒」で、AIとのやりとりが人間と話している時と同じように円滑になったという。
2022年11月にリリースされたチャットGPTは、利用者が史上最速のわずか2か月で1億人を突破し、世界は一気にIT社会からAI社会に突入した。それ以降もチャットGPTは、文章で指示すれば最長1分の動画を簡単に作ることができる動画生成AI「Sora(ソラ)」をリリースするなど進化を続けている。
そしてオープンAIは2024年10月、アメリカの半導体大手エヌビディアやマイクロソフト、日本のソフトバンクグループなどから新たに66億ドル(約9600億円)の資金を調達。企業の評価額は1570億ドル(約23兆円)に達し、非公開企業として歴史的な水準になったと報じられた。
生成AIはチャットGPT以外にもグーグルの「Gemini(ジェミニ)」、マイクロソフトの「Copilot(コパイロット)」など続々と登場している。まさに百花繚乱の様相を呈し、日進月歩どころか“秒進分歩”で進化が加速している。