日本で初めて実施「腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術」
「手術で糖尿病が治る」と聞くと驚く人が多いはずです。通常、肥満による糖尿病はまず内科医が診察し、血糖値を下げる内服薬と食事・運動療法の組み合わせで治療するからです。しかし、薬や食事、運動は対症療法であって、原因となる肥満症の根本治療ではありません。
減量手術は1950年代に開発され、1960年代にアメリカで「胃バイパス術」が行なわれるようになりました。その後、1995年にアメリカのポーリー博士が「胃バイパス術で糖尿病が寛解する」という論文を発表したことで、肥満を原因とした糖尿病の治療法として注目されるようになりました。
胃バイパス術とは、胃袋を上部の小さな袋と下部の大きな袋に分けて、小さい袋に小腸を直接繋げ、繋がった小腸の途中に胃の下部と十二指腸を吻合し、胆汁と膵液を流れ込むようにする方法です。一部の胃と十二指腸をバイパスすることで栄養の吸収を制限して減量するという考え方で、アメリカではこの手術が減量・糖尿病外科治療のスタンダードとして数多く実施されています。
しかし、腹部を大きく切る開腹手術だったことで、減量と糖尿病の治療効果が高いにもかかわらず日本ではほとんど行なわれませんでした。術後に胃の下部の内視鏡検査ができなくなることも、胃がん患者の多い日本では普及しなかった理由です。そんな中、私は2002年に初めて腹腔鏡を用いた「腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術」を行ないました。