糖尿病の「第6の合併症」と呼ばれはじめている歯周病。歯周病原菌の毒素が体内に入ると、血糖値が上昇し糖尿病発症や進行に繋がるという──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、日本大学松戸歯学部で歯周治療学講座を受け持つ小方頼昌教授に話を聞いた。【糖尿病を悪化させる歯周病・前編】
歯周病は糖尿病の発生や進行の原因の1つ
歯周病は、歯周病原菌による感染症で歯を支える歯周組織に炎症がおこり、骨や歯周組織が破壊される病気です。現在、成人の歯が抜ける原因の第1位となっています。
歯周病原菌に感染すると歯と歯肉の間隙(ポケット)が生じ、時間の経過とともに深くなっていきます。ポケットの深さが4mm以上になると歯周炎と診断されます。歯周病患者は30代で約3割、40代では約半数といわれ、決して高齢者だけの病気ではありません。
歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。プラークは、歯の表面についた菌が増殖し、塊となってバリアを形成したもので、「バイオフィルム」とも呼ばれます。歯周病原菌がポケット内で増殖することで、歯肉に炎症を起こし、次第に歯を支えている骨を溶かし最終的に歯が抜けてしまいます。
歯周病原菌は複数確認されていますが、いずれも「グラム陰性菌」というタイプで空気に触れない場所で増殖します。特に多い歯周病原菌が「P(ポルフィロモナス)・ジンジバリス菌」です。
新潟大学のグループが行なったジンジバリス菌をネズミに飲ませる実験によれば、生理食塩水だけを飲ませているネズミは体調に変化はありませんでしたが、生理食塩水にジンジバリス菌を混ぜたものを飲ませたネズミの脂肪組織は所々黒く変色していました。また、脂肪肝になっているネズミも多くいました。さらに血中の中性脂肪の数値が上昇し、炎症性サイトカインが血中に増えることも確認されたのです。