閉じる ×
大竹聡の「昼酒御免!」

100年以上の伝統を引き継ぐ琥珀色のハイボール 「浅草たぬき通り」に漂う名門酒場の風格

いつ飲んでもとにかくうまい

これがサンボアのハイボール。頼めば目の前であっという間につくってくれる

これがサンボアのハイボール。頼めば目の前であっという間につくってくれる

 店内へ入り、カウンターの客になる。椅子の用意もあるけれど、基本はスタンディング。「サンボア」は神戸発祥の老舗中の老舗で、大阪、京都、神戸と、東京に同名の店がある。その数、大阪が9店、京都3店、神戸1店、東京3店。各店の主は、「サンボア」で修業を積んだ後にのれん分けで独立した本人か、その後継者である。創業は1918年。店の歴史は、すでに106年に及ぶ。

 浅草店の店長は、松林喜智さんだ。酔っ払いの私が、昼下がりから飲んでヘロヘロになれば心配し、深夜、麗しい女性編集者と流れ込んで騒げば、ちょっとお声がとやさしく諫めてくれる。痩身できりっとした目が印象的。一見しただけでは、ちょっと、おっかない感じなのだが、話せばわかる。気のいい、とても話しやすいバーテンダーなのだ。

 サンボアと言えば、ハイボールである。ボトルごとキンキンに冷やした角瓶から、やはりよく冷えたグラスにウイスキーを注ぎ、後から炭酸1本をドボドボと足して完成だ。

 目の前に出てきたのは、氷なし、色合いもちょいと濃いめの1杯だ。ウイスキーの量が、この濃い色の、秘密ですな。

 うまいんだな。この氷なしハイボールが。いつ飲んでもうまいんだ。ド二日酔いで、コーヒーも飲みたくない午後でもうまいし、夜も更けて、帰りゃいいのにこのオヤジまだ飲むのかよと同行者に呆れられる状態にあっても、なおうまい。

 添えてあるのは、茶色い薄皮つきのピーナッツ。落花生ですな。これがまた、香り高くてうまいのを出してくれる。皮ごと口に入れて渋さも味わうのが私は好きで、ピーナッツの薄皮剥く奴ぁどうかしている、なんて、思ったりもしている。

 カウンターの背後には、丸テーブルと、4人掛けの四角いテーブルが2卓ある。床と壁はダークブラウンで、壁のランプが、柔らかな光を落としている。床は板敷きだから革靴で来たほうがいいと私は思っている。トイレへ行くにもコツコツと足音が響いて嬉しいからだ。

次のページ:堂島のサンボアでの貴重な経験

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。