「50万円の壁」が62万円に引き上げられたらどうなるか
「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏は年金で得するチャンスだと指摘する。
「在職老齢年金制度はシニアの稼ぐ意欲を失わせるひどい仕組みですが、それでも身につけたスキルを活かしたいからと年金カットを覚悟でバリバリ働いている人は少なくない。そうしたなか、今回はいい方向への変更になる。多くの人が65歳以降も年金支給停止を気にせずに稼げるようになり、給料と年金のトータルの収入も増えるわけです」
具体的にどのくらいの収入増になるのか。「50万円の壁」が62万円に引き上げられるケースで見てみよう。
たとえば、月給50万円、年金(報酬比例部分)が12万円のサラリーマンの場合、現行制度では合計収入が「50万円の壁」を超えるため年金のうち6万円が支給停止され、合計収入は56万円だ。それが「62万円の壁」に引き上げられると、年金12万円を満額支給され、給料と年金合計62万円がそのまま収入となる。
言い方を変えれば、これまでは年金(報酬比例部分)12万円の人が年金減額で損しないためには”働き控え”をして月給38万円以内に抑える必要があったが、改正後は月給50万円まで稼ぐことができるのだ。
この62万円への引き上げは厚労省が検討する3つの案の中で、「一番実現性が高い案」(北村氏)と見られているものの、仮にこの壁の上限がより高くなれば、それだけ多く稼げるようになる。
厚労省の試算によれば、「50万円の壁」を62万円まで引き上げれば約20万人、71万円なら約27万人、完全廃止の場合は約50万人が年金減額されなくなるという。“働き控え”をしている人を含めると恩恵はもっと広い層に及ぶ。
※週刊ポスト2024年12月20日号