年金改革の議論の場で“モノ言わぬ学者たち”
厚労省は11月25日の社会保障審議会年金部会で、将来的に低年金に陥る人を減らすため、基礎年金(国民年金)を3割程度底上げする案を示した。自営業者らが入る国民年金は財政難にあるが、一方で女性や高齢者の労働人口の増加に伴い、厚生年金財政は潤った。この金で国民年金財政を支える目論見だが、厚労省は長年、「国民年金と厚生年金は財政を分ける」と言ってきたはずだ。取りやすいところから取るその場しのぎの政策だと言わざるを得ない。
それに、厚生年金財政を使わなくても財源はある。累積の収益額が160兆円の黒字で、運用資産の総額が250兆円に達するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の年金積立金を取り崩せばいいのだ。GPIFの積立金を5年ほどかけて取り崩していけば、負担を伴わず年金を拡充できる。
こうした議論が起きない原因は、年金改革の議論の場となる社会保障審議会年金部会に参加する学者たちにある。厚労省の“御用学者”ばかりで、お上にしっぽを振って国の方針にお墨付きを与える罪深き者たちだ。
モノ言わぬ学者たちのせいで、我々の年金が食いつぶされていくのである。
【プロフィール】
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。
※週刊ポスト2024年12月20日号