闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回は石破政権の経済政策について。森永氏は「このままでは令和恐慌へとひた走ろうとしている」と心配するが、どういった問題があるのか。森永氏が解説する。
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先の衆院選(10月27日投開票)で自民党が大惨敗した。自公の過半数割れを受けて、石破茂首相は国民民主党との「部分連合」で当面の政局を乗り切るつもりだが、党内で「石破降ろし」が実現しなかったことに、私は深い憂慮を抱いている。石破政権の続行で日本経済は「令和恐慌」まっしぐらになるからだ。
振り返れば、9月の自民党総裁選の結果を最も喜んだのは財務省だ。総裁選候補者9人のうち8人を増税ありきの「ザイム真理教」に洗脳した財務省にとって、唯一の懸念は洗脳に失敗した高市早苗氏だった。彼女が当選したら財務省はパニックに陥っていたはずだ。
それに対して石破氏は安全保障や地域活性化には詳しいものの、経済に関しては完全なシロウト。財務省の“進講”を受けてすっかりザイム真理教に洗脳され、総裁候補者のなかで最も増税寛容派に傾いていた。消費税増税を否定しなかった候補者は石破氏だけである。
「日本の財政は極めて深刻ゆえ政策を推進するためには消費増税は避けられない」――そう信じ込んでいるのだ。財務省は石破総理の誕生で「消費税15%」への道筋がついたと歓喜しているだろう。
米国が利下げに踏み切ったように、世界のマクロ経済政策は金融緩和・財政緩和に大転換した。そのなかで日本だけが逆噴射の政策に邁進している。
植田和男総裁が率いる日銀はさらなる金融引き締めのスタンスを変えていない。石破政権はここに増税による財政引き締めを並行させるつもりだ。日本経済がデフレの入り口に立つなか、金融と財政の引き締めをしたら恐慌に向かうのは確実である。