なぜ「イタリアレストラン」であることを示すことを重要視するのか
そんなイタリア料理のシンボルとしての「グラッパ」だが、メニューから姿を消していた。やはり、赤字だったのであろう。しかし、2023年7月に再びメニューに登場した。以前は400円で提供されていたが、今回は300円にまで値下げされている。赤字商品として知られるグラッパがなぜ再びメニューに復活したのか、その理由は定かではない。しかし、原価、製造コスト、お店での注文数などから考えると、いまだに赤字の可能性も否定できない。
なぜ、イタリアレストランであることを示すことを重要視するのかについては、次の書籍が参考になるのではないだろうか。サイゼリヤの創業期を取材した書籍『サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”レストランチェーン誕生秘話』(山口芳生著)では、次のような正垣氏の言葉を紹介している。
〈「毎日食べても嫌にならなかったのがイタリア料理だった。フランスはよそ行きの料理だったし、スペイン料理は油が多く感じられた。イタリアのようなシンプルさがなかったよね」
なかでも印象に残ったのが、ローマで何軒も食べ歩いているうちにたどり着いたマリアーノという店だ。それまで食べていたイタリア料理よりもはるかに繊細で、正垣の、つまり日本人の口にあった。〉
〈驚いた正垣は日を改めて訪れ、フルコースで食べてみることにした。時間と資金が限られた視察旅行では、アラカルトで注文するしかなかったため、初めてフルコースで注文したのだが、食べる順序から料理に合わせる飲み物まで、一連の流れになっていることに衝撃を受けた。
「しかも、それぞれに選択肢がある。水だってガスが入っているかノンガスか自由に選べるんだからね。なんて豊かなんだろう、これが料理なんだ、これが食文化なんだって思ったよ。それで、このマリアーノを自分たちの原点にしようと決めたの。それから4年間、毎年、従業員を連れて食べに行ってる。今は従業員がずいぶん増えたけど、全員に行かせようと思ってる。自分たちはここから始まっているということを知ってもらいたいからね」
こうしてサイゼリヤはイタリア料理店として再出発することになったのだ。〉