「借りて、後で相殺すればよい」と融資を申し込む
「100万円を入金したところで、投資サイトから『キャッシュバック・キャンペーンをしている』という連絡が来ました」(唐田さん)
すると、サイトに登録していた自分の銀行口座に5万円、10万円の振り込みがあり、2度にわたってキャッシュバックされました。これを見て唐田さんは「お金が戻るしっかりした投資サイトだ」と思うようになります。
しかし手元の資金がなかった唐田さんは、これ以上のお金を出すことができません。すると後藤FAから、サイト内での融資を受けられる制度があることを伝えられます。投資サイト上では、資産額が日本円で数百万円もの金額になっていたので、唐田さんは「借りて、後で相殺すればよい」と軽い気持ちで、200万円の融資を申し込みます。
唐田さんは「この時、いつまでに返済しますという契約書に署名されられて、返信しました」といいますが、後にこの契約書で足元をすくわれることになります。このお金を元手に取引をすると、日本円で1000万円ほどになりました。そのお金で十分に相殺できると思い、さらに400万円のお金の融資を申し込みます。唐田さんは、この時点で100万円の送金に加えて、600万円を投資サイト側に借りた形になっています。
2週間ほどたって、契約書に記載のあった返済期日が近づきます。そこで、ご主人に嘘をついて、600万円を借りて払います。
なぜ出金をしないで、唐田さんは自腹でお金を払ってしまったのでしょうか。そこには、詐欺グループの巧みな工作がありました。
唐田さんは、返済のために、サイトに出金を要請しました。しかしサイト側からは「融資がある場合、出金はできない。現金で返済しない限り出金はできないシステムになっている」と告げられたそうです。目の前には1000万円を超えるお金がありますので、それで相殺すればよいとの思いで、お金を工面しています。
「主人に本当のことをいえば、このような投資に反対されると思い、相談できませんでした。でも、この時本当のことをいえばよかった。自分がだめだった」と唐田さんは大きな後悔をしています。
6月末には、投資サイト上の資産額は、日本円で億に近い金額になっていました。投資サイトへの借金も払い終えて、唐田さんはまず100万円の出金の手続きをします。
すると「日本支社の小野」を名乗る男から「出金手数料として20%が必要」との連絡がきます。そこで唐田さんは、20万円を工面して送金します。しかしお金は一向に振り込まれません。そこで小野に連絡をすると「出金に際しては、さらに所得税などを支払う必要がある」といわれます。そして500万円を請求してきます。唐田さんは、サイト内にある億のお金が手にできるのなら、との思いで、消費者金融などから必死でお金を借りて工面します。
支払いを済ませると、小野からは「これで、手続きは完了です」という連絡がきます。唐田さんは安心していましたが、なかなかお金は振り込まれません。その理由を尋ねると「現在、出金するユーザーが多く、あなたの順番は8000番くらい後になるといわれます」そこで「いつになるのか?」を尋ねても、相手からは「わかりません」の答えだけが返ってくるだけだったといいます。
ここでようやく唐田さんは、詐欺に遭っていることに気づきます。最初に投資広告を見てから3か月ほどがたった8月のことでした。この他にも「あなたは不正行為した」といういいがかりをつけられて、保証金300万円を払ったこともあり、その結果、多額の借金を背負い、約2000万円の被害になっています。