エミン:最後の大勝負などと言って、運にすべてを賭けちゃって、一瞬でゼロにしちゃうんだよね。
木原:参加者が1000人規模のポーカートーナメントの優勝者であっても、手持ちチップが激減するような窮地は必ず訪れます。そんな状況でも淡々と期待値が高くなるようにプレーしないといけないんですが、多くの人がすぐにでもチップを取り戻そうと無理なプレーをしてしまうんですよね。
逆パターンとして、勝っていると気が大きくなってルース(多くのハンドでゲームに参加するプレースタイル)になる人もいますが、そこで負けたときにタイトに戻せるのであればそれ自体は悪くないプレーなんです。
エミン:いずれにしても、含み損を抱えるというのは苦しいことです。たとえ成長ストーリーが生きていても、その銘柄の魅力が失われていなくても、たまたま相場環境が悪くて大きな損失を出すこともあります。
木原さんのように、買いも売りも一貫したストーリーに基づいた判断ができるのが理想ではありますが、何%の損失が出たら機械的にいったん切るというルールを決めておくのも、ひとつの方法です。
含み損を見るのは気持ちのいいものではないので、僕の場合は一度損切りをして、成長ストーリーに変化はないと判断できれば同じ株価で買い直すということはよくやっています。口座から含み損が消えてスッキリするし、その年に出した利益と相殺できるので税額を減らす効果もあるんです。損切りはなるべく早く、利食いはなるべく先延ばしにすることが、資産を増やすポイントです。
※エミン・ユルマズ氏、木原直哉氏の共著『「確率思考」で市場を制する最強の投資術投資』を元に一部抜粋して再構成
【プロフィール】
エミン・ユルマズ/エコノミスト、グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1980年生まれ、トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。2024年レディーバードキャピタルを設立。ポーカーネームは、JACK。著書に『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『エブリシング・バブル終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025』(プレジデント社)など多数。
木原直哉(きはら・なおや)/プロポーカープレイヤー。北海道名寄市出身。2001年に東京大学理科一類に入学。2012年WSOP $5000 Pot-Limit Omaha 6-Handedで優勝し、日本人初のブレスレットホルダーに。著書に『東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考』(KADOKAWA)、『運と実力の間』(飛鳥新社)、『たった一度の人生は好きなことだけやればいい!東大卒ポーカー世界チャンプ 成功の教え』(日本能率協会マネジメントセンター)、近著にエミン・ユルマズ氏との共著『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』がある。