罰則がない「カスハラ防止条例」は抑止力になり得るのか
また今年10月には、全国に先駆け「東京都カスハラ防止条例」(2025年4月施行)が成立した。
ただし罰則のない「理念条例」なので、カスハラ抑止の有効手段となるかは不透明だ。また客側に「威力業務妨害」「強要」「不退去」「暴行」など明らかな不法行為があったとしても、制止や取り押さえのため相手の体に触れてしまえば、今回の黒かどや氏のケースのように、逆に訴えられるリスクがある。
黒かどや氏は「個人の飲食店でカスハラ対応をマニュアル化するのは難しい」と言う。
「うちは大きなトラブルを避けるため、迷惑客には店主の私の判断で退店を促します。それでも居座る場合は警察を呼ぶ。ただ、警察が介入しても『言った、言わない』『手を出した、出さない』の水掛け論になることが多い。本来は注意書きなど貼りたくないのですが、苦肉の策で店内外に店のルールを掲出、また防犯カメラを設置し、万一のトラブル発生事に“証拠”を残す自衛策を講じている次第です」
ただし、カスハラ客に対して「平身低頭で言い分を聞くのは悪手」と黒かどや氏が続ける。
「明らかに理不尽かつ横暴ないちゃもんを付けられた際、『事態を悪化させないために』と謝ってしまうと、確実に相手は増長します」
司法が介入する事態となる前に、互いに節度を保ち心地よい距離感を保ちたいものだ。