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【魚の専門家が解説する“時価”の秘密】天然物ゆえの価格が変わってしまう事情 「明朗会計」での掲示が逆にお店と客の間にストレスと生むことも

店員に聞いてみないと具体的な値段がわからない「時価」の事情

店員に聞いてみないと具体的な値段がわからない「時価」の事情

 高級寿司屋や刺身を提供する居酒屋などで多く見かける“時価”。明朗会計が一般的な現代において、そのシステムには謎も多い。そんな“時価”システムには「事前に値段が分からないと不安だ」という声も根強く、2007年に気仙沼寿司組合が“時価完全撤廃”に乗り出したと報じられた際は話題になった。それでも今なお、全国に広く存在し続ける理由は何か。魚の専門家に話を聞いた。

お店と客のストレスを減らす仕組み

 魚の仕入れ値は、日によって大きく変動する。とりわけ、即、食べることが前提となる魚の価格に影響する要素は多く、その日の漁獲量をはじめ、漁法や締め方、流通手段などで変化する品質面も大きい。『魚ビジネス』の著者であり、おいしい魚の専門家で、東京海洋大学非常勤講師も務めるながさき一生氏は「本来、生魚は値段が定まりづらいもの」だと話す。

「魚は天然物であることが多く、毎日相場が動きます。そのため、そもそも“時価”が基本です。定価で生魚を提供している飲食店は、相場の変動幅を鑑みたうえで価格を設定しているんです。つまり、安く仕入れることができればお店は儲かりますが、その日の仕入れ値が高い場合は儲けがほとんどなくなるということです」(ながさき氏、以下「」内同)

 天然の魚を扱う飲食店には、人知れぬ努力があるのだ。とはいえ、「値段を隠すのは、儲け幅を大きくするためでは」という疑念を抱く消費者もいるかもしれない。時価ではなく、その日の値段を都度掲示すれば解決するようにも思えるが──。

「それも難しい問題です。仮に『本日、のどぐろ600円』と貼り出したとして、翌日『のどぐろ1200円』に変わっていたら、『昨日は600円だったのに、いきなり倍に値上げした』などと余計な憶測を呼ぶ懸念もある。そういったやり取りのストレスをお互い減らすため、“時価”と表記しておいて、価格を訊かれたら答える、というお店が多いと思います」

「ぼったくり」をされないかという心配について、ながさき氏が“良店の見極め方”を伝授する。

「結局、判断材料は『お店がちゃんとしているかどうか』です。不安であれば、予めお店の評判を他の人に聞いてみたり、調べたりするといいでしょう。また、“時価とされているネタ(魚種)”に注目するのもひとつの手です。例えば、マグロが時価だと特別な事情がある場合を除き、あまり信用できません。マグロは比較的安定的に入荷する魚なので、価格が日によってそこまではブレないんですね。一方で、のどくろのように小さくて天然物しかない魚が時価だと信用できるでしょう」

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