長野県の伝統的な食文化も関係
「海が遠い」という魚の生食にとって不利な状況が、「サラダ軍艦」を人気メニューに押し上げたという見方だ。ながさき氏によると、長野県にはもともと「生魚の流通が難しい」という事情で重宝された独自の“海の幸”があり、その一つがサラダ軍艦の具材にもなっている“イカ”だという。
「『塩丸イカ』という、スルメイカを一匹まるごと茹でたあとで塩漬けした、長野県特有の加工食品があります。海産物をなんとか内陸県で食べようとした先人の知恵で、イカを使った『サラダ軍艦』が長野県民に受け入れられた背景には、こういった伝統的な食文化もあるかと思います」
今やかっぱ寿司では「サラダねぎとろ軍艦」「サラダ感動コーン軍艦」といった進化版も多数展開している。さらに今年3月には、創業当時の味を再現した「プレミアムサラダ軍艦」が期間限定で登場するなど、“サラダ軍艦推し”のブランディングは他のチェーン店にない特色だ。
安く美味しいお寿司が食べられる回転寿司チェーンだが、様々な食文化や“魚食事情”が垣間見える場所でもある。回転寿司に行く際には、どんな推しのラインナップがあるのか観察してみると、新たな発見があるかもしれない。
【プロフィール】
ながさき一生(ながさき・いっき)/1984年、新潟県糸魚川市生まれ。株式会社さかなプロダクション代表取締役、東京海洋大学非常勤講師。漁師の家庭で家業を手伝いながら18年間を送る。2007年、東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売会社で働いた後、同大学院で修士取得。2006年からは魚好きのコミュニティ「さかなの会」を主宰。漁業ドラマ『ファーストペンギン!』では監修も務める。著書に『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)。