夫の扶養に入っていれば納める必要のなかった国民健康保険料や国民年金保険料の負担が増えてしまうのである。
「また一般的に週30時間(1日6時間で週5日)働く方は、自分で健康保険料や厚生年金保険料を支払わなくてはなりませんし、従業員501人以上の企業に勤めている方なども、1年を通じて収入が106万円以上になる可能性が出てくると、自ら社会保険を納めなくてはなりません」(藤川氏)
そうなってくると、「女性が働きやすくなる社会」を目指して配偶者控除のラインが引き上げられたとしても、社会保険のラインには注意が必要だ、と藤川氏は続ける。
「『130万円の壁』だけでなく、勤務時間や勤務先の規模などによる社会保険のラインを超えてしまうと、いくら配偶者控除が使えたとしても、世帯全体の手取りが減る恐れがあります。一方で将来の年金が増える可能性もありますが、結局、中途半端に多く働くとかえって手取りが減ってしまう状況に変わりはない。そもそも夫の年収が伸びにくい環境のなか、今回の控除額引き上げで肝心の消費に回るとは思えず、経済波及効果は見込めません。そう考えていくと、税制改正の効果はあまり期待できないのではないでしょうか」
女性を活躍させるための税制改正も、実態は政治的なアピールにすぎない、ということのようだ。