お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。今回は師走のある日、都会のど真ん中で寒さも吹き飛ぶ逸品に舌鼓を打つ。【連載第6回】
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銀座で昼飯。さて、何を喰おうか。中華に洋食、寿司に天ぷら、蕎麦も捨てがたいなどと思い浮かべるとき頭をよぎるのが、どうせランチにするならちょっとは飲みたいな、ということだ。
たとえば、中華。定食にビールを添えるとか、春巻きでビールから始めて、あんかけ焼きそばなんかつまみながら紹興酒にするとか、あれこれ考える。
さらに、もう一歩先へと思いが進むと、軽く1、2杯飲むか、あるいは、1、2時間飲むか、というところに行きつく。
そのとき思いつくのが「三州屋」だ。銀座2丁目、並木通りから入る路地の突き当りに、「白鶴」の名が入った縦長の看板がかけてあって、「活魚料理 三州屋銀座店」とある。引き戸には、この時期、濃紺の暖簾がかかっている。
ああ、やってる、やってる。ありがたいねえ。
がらりと戸を開けて中を覗くと、すでにほぼ満席だ。こちらは、いつもの飲み友ケンちゃんと私のふたりだから、予約などしなくても大丈夫だろうと思っていたけれど、空いていたのは1卓だけだった。ぎり、セーフ、というヤツだ。
「お食事ですか? お酒ですか?」
「ああ、飲みます、飲みます」
平日の昼下がり、銀座の大衆酒場で交わす最初の会話がこれだ。実に気分がいい。見回すと、昼の定食を食べる人と、昼から飲む人と、7対3くらいか? いやいや、6対4か? ひょっとすると半々か。そんな感じ。
「瓶ビールください」
「アサヒ、キリン、サッポロ、どれにしますか?」
「じゃあ、サッポロ」
「サッポロは……」
「赤星にしてください」