さすが大衆割烹というべき充実メニュー
お通しに、枝豆が出た。箸袋には「大衆割烹 三州屋」と印刷されている。いいねえ、改めて。大衆酒場でなく、大衆食堂でなく、大衆割烹だ。こちらのメニューの充実ぶり、そのうまさ、腹いっぱい食べるもよし、酒肴としてあれこれ頼むのもよし。大衆割烹という呼び名が実にぴったりくる。
枝豆で瓶ビールをやりながら、待つことしばし。鳥豆腐がやってきた。鳥の出汁の効いたスープに、豆腐と鳥と青菜を具材にした、小鍋のような一品である。
私はこれまで、「三州屋」というと、銀座店のほかに、六本木店(移転前のお店)、神田店にもお邪魔をしてきたけれど、いずれの店でも必ず鳥豆腐を頼んだ。鳥豆腐は「三州屋」の名物であり、私の好物なのだ。
今日はふたりでつまむので、丼から小鉢に取り分けるのだが、そのしばらくの間も惜しいくらいに、この一品は熱いうちに味わいたい。夏場でも熱々で食べるのが、おいしくいただくコツだと思っているくらいだから、この時期はなおさらだ。急いで食す。ハフハフいいながら汁を啜り、豆腐と鳥と小松菜を次々に口へ運ぶ。
ああ、うめえ。うめえなあ、鳥豆腐は……。声には出さないが、私の心が言っている。
アジ叩き、イワシ叩き、カツオ叩き、ぶり刺身、銀ムツ煮付け、きんめ煮付けなどの定食には、ご飯、漬物のほかに、この鳥豆腐が汁ものとして添えられる。すばらしい取り合わせなのだ。食べるたびにそう思う。実際、周囲を見渡せば、食事目当てのお客さんたちの中には、鳥豆腐つきの定食を召し上がっている人が多い。男性客はご飯を大盛りにしているみたいだが、大盛りも追加料金はかからない。まことに親切。ちなみに、アジ叩き定食は鳥豆腐がついて1450円。生ビールの(小)は480円。2000円でおつりがくるのである。