エンジン車市場を破壊して新たな市場に作り替え
少し、変わったところを攻めているのは広州汽車集団だ。子会社を通じて空飛ぶ自動車の開発を積極的に進めている。蔚来集団、長安汽車などもこの分野への研究開発投資に力を入れている。
中国では多彩な企業が全力でエンジン車市場を破壊し、新エネルギー自動車、完全自動運転技術を搭載したスマートEV、或いは低空経済まで見据えた“移動手段に使われるスマート電気製品”市場に作り替えようとしている。
もし、小米集団の雷軍会長や、蔚来集団の李斌会長が日産の社長であったら、この危機にどう対処するだろうか。電池、自動運転、商品開発など一部の重要部門と、一部の先端製造部門だけを厳選して残し、過剰で時代遅れとなったエンジンを含むその他の製造部門はすべてリストラし、その上で新たに最適なサプライチェーンを構築しようとするのではなかろうか。さらに、世界中から数千万円クラスの一流の研究者、技術者を千人単位で雇い入れ、全力で集中的にコアとなる技術、ブランド力強化を図るのではなかろうか。
日産自動車はホンダとの経営統合によって、当面の財務問題は解決するかもしれない。しかし、本業をどう立て直すかという点では確かな解決策は見えてこない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。