本丸は「オバマケアの見直し」と「ウクライナ戦争の停戦」か
政府予算削減の“本丸”は、医療と軍事である。たとえば、医療は2014年にスタートした「オバマケア」の見直しだ。これは無保険者の削減を目指した医療保険制度改革で、導入後に普及・拡大した。
その結果、いまや社会保障、メディケア(高齢者・障害者向けの医療保険)、メディケイド(低所得者向けの医療保険)などの支援制度にかかる費用の総額は政府支出の50%近くを占め、対GDP(国内総生産)比で約15%に膨らんでいる。
オバマケアについてトランプ大統領は「廃止はしないが、今よりずっと良いものにする」とXでコメントしているが、マスク氏は廃止してしまうかもしれない。
軍事分野は、まだ米ソ冷戦時代の残骸が多々ある。マスク氏はXで無数のドローンが様々な形で編隊飛行する動画とともに「まだF-35のような有人戦闘機を作っているバカがいる」と批判した。彼は予算削減のためなら中国製ドローンでも安ければ買うかもしれない。中国製品は共産党政府に情報を抜かれているとされるが、それすらマスク氏なら逆手にとるに違いない。中国製品を大量購入する代わりに、中国の特許や資源を要求する可能性もある。
また、ウクライナ戦争は停戦に向かうだろう。トランプ大統領はウクライナへの巨額支援を批判し、戦争を早期に終結させると主張してきた。ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領に「取引をまとめろ。これ(戦争)は狂気の沙汰だ」と停戦を求めるとも述べていた。
ゼレンスキー大統領はアメリカの支援がなくなれば継戦が難しくなるから、領土面で妥協を迫られたとしても、トランプ大統領の停戦案を飲むしかないと思う。早期停戦は軍事費の大幅削減につながるので、マスク氏の目的とも合致する。
これらの政策を実行すれば、政府機関を中心に大量のリストラが発生する。だが、いまアメリカは労働力不足だし、トランプ大統領は不法移民を「史上最大規模で強制送還する」と言っているから、“行って来い”で、失業者が再就職先に困ることはないだろう。