しかし、撒骨は外見上遺骨を遺棄することになりますから、法令違反の疑いが拭えないのは確かです。以前に、刑法が遺骨遺棄を禁じているのは「宗教的感情などを保護することが目的だから、葬送のための祭祀で節度を以て行なわれる限り問題ない」と法務省官僚が述べたとの報道があったようですが、公式の見解は知りません。
とはいえ、撒骨を業とする事業者もいます。死者を悼み、菩提を弔う意図であれば、撒骨が遺骨遺棄罪に問われることはないはず。問題なのは、個人が自宅庭に撒く場合、焼骨は骨の形状をいくばくかとどめているので、そのまま撒くことは出来ず、撒骨は粉状にして行なわなければならないため、遺骨の損壊にならないか心配です。
それでも、こうした作業を経て冥福を祈る葬送として行なえば、あくまでも私見になりますが、社会の宗教的感情を侵害せず、刑法には触れないでしょう。ただし、他人の土地で勝手に撒骨すると、廃棄物の違法処分を受けます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年1月17・24日号