「故人の遺志をなるべく尊重して遺体を葬りたい」と思う遺族は多いだろうが、葬り方次第では法令違反になるケースもある。では「家の庭に撒骨」する場合はどうだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
父が死にました。もともと父には宗教心がなく、随分と前に先祖の墓じまいをし、自分が死んだら、家の庭にでも撒骨すればよいと申していたのです。私も新たに墓を建てようとは考えていないので、父の遺志を尊重して骨を庭に撒骨したいのですが、こういう場合、勝手に撒くと、罰せられてしまいますか。
【回答】
法令、又は慣習により、葬祭をする義務のある者が遺体を放置すれば、刑法190条に違反する死体遺棄の罪になるため、遺体を葬ることが必要となります。
その方法や手続きを定めているのが、墓地埋葬に関する法律の『墓埋法』です。この法律では遺体を葬る方法として、死体を土葬にする「埋葬」の他、焼く「火葬」を挙げています。火葬とは死体を焼いて焼骨にすることですが、それは葬るために焼く行為ですから、死者を悼む葬送行為として行なわれる焼却が必要な上、許可を受けた火葬場でしかできません。
焼骨は故人の祭祀のための「遺骨」として、前記の刑法190条により保護され、損壊や遺棄は処罰されます。ただ、すでに葬送が済んでいる焼骨を手元で供養するのは遺棄でなく、問題ありません。