そしてホンダと日産が組もうとしているのは、ソフトウェアの開発に莫大な投資が必要となるため、1社で負担していては回収できないとの思惑もあるからだ。三菱自動車を加えた3社連合が成立すれば、合計の研究開発投資額は1兆9650億円となり、トヨタの1兆3000億円を上回る。
クルマの「スマート化」は産業革命を誘発することになるかもしれない。1900年のニューヨークの道路は馬車で溢れていたが、1920年頃になると、それが自動車に取って代わられた。1908年にフォードが大量生産方式を編み出し、車を世に送り出したからだ。
馬車を作っていた会社のなかにはおそらく廃業したところもあるだろう。馬具メーカーだったエルメスはバッグや財布などに移り、事業を転換したことで今でも高級ブランドメーカーとして世界に君臨している。
歴史は繰り返すという。今道路を走り回っているハイブリッド車やガソリン車がいつの間にかロボットカーに置き換わっていてもおかしくはない。
ホンダと日産の経営統合交渉はそんな時代を見据えての動きなのかもしれない。
■特集全文:ホンダ&日産が経営統合へ、巨大連合“誕生”の裏で起きていた内幕 水面下で蠢いた“台湾の巨大企業”と日産“元ナンバー3”の逆襲
【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。ジャーナリスト。大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立、フリージャーナリストに。主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある。
※週刊ポスト2025年1月17・24日号