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ビジネス

物価高でも「100円たこ焼き」を続ける激安スーパー 商品誕生の経緯とコストを抑える工夫「今後も100円にこだわり続けます」

たこ焼き、ソフトクリームなどを販売する100円ファストフード店「パクパク」は午前10時~午後7時まで営業(写真提供/大黒天物産)

たこ焼き、ソフトクリームなどを販売する100円ファストフード店「パクパク」は午前10時~午後7時まで営業(写真提供/大黒天物産)

最初はお得意様への“おまけ”だった

 いつから、どのような経緯で「100円たこ焼き」を販売するようになったのか。「ラ・ムー」「ディオ」を運営する大黒天物産の広報担当に話を聞いた。

「2002年、『ディオ本店』(岡山県倉敷市堀南)で初めて100円のたこ焼きを販売し始めました。実はそれ以前、同市内の『ディオ水島店』など別の店舗で、たくさん買い物をしていただいている方やよく買われる方など、一部のお客様に“どうぞお持ち帰りください”と、たこ焼きを焼いてプレゼントとしてお渡ししていた歴史があるんです。“おまけ”のようなものだったのですが、お客様たちから“美味しい”と大変好評をいただき、人気を呼んだことから、店で販売しようということになったのです」

 その後、2003年に新業態の複合型商業施設として出店展開を開始した「ラ・ムー」でも、たこ焼きを販売するようになった。

 値段は発売当時から現在まで、ずっと税込100円のまま。2002年当時は5%だった消費税は2014年に8%、2019年からは10%(酒類・外食を除く飲食料品、新聞は8%の軽減税率)に引き上げられ、昨今は物価高、光熱費、人件費、物流費、資材費などの高騰といった厳しい環境が続くが、今も税込100円の価格を守り続けるのはなぜか。

「驚きの安さでクオリティを保つのが、ディスカウントストアの商売をしている私どもの会社の一番の根源です。100円という驚きの安さにこだわりますが、品質を落とすことは一切しません。たこ焼きの粉も、一般的に400円、500円で売られているたこ焼きと遜色ないものを使用しております。ソースはオタフクソース(広島市)のソースを使っています。たこ焼きの大きさも2002年の発売当時と同じです」(広報担当、以下同)

 たこ焼きには爪楊枝より太くて長い串が1本添えられており、容器には輪ゴムがかけられ、さらに無料のレジ袋に入れて手渡される。

「パクパク」の店頭では、たこ焼きを焼く様子を窓越しに見ることができる。焼き上がるのを待つ間、スーパーで買い物をする客も多い

「パクパク」の店頭では、たこ焼きを焼く様子を窓越しに見ることができる。焼き上がるのを待つ間、スーパーで買い物をする客も多い

振動でたこ焼き自身が回転して焼き上がる

 このご時世、たこ焼きの品質と味を保ちながら、こうした梱包資材も含めて1パック税込100円の価格を実現できる理由を尋ねた。

「そのために様々な工夫をしています。たとえば焼き台もその1つ。当初は鉄板でしたが、今は銅板を使っています。焼く時間の短縮や効率化を図るために研究を重ねたところ、銅の方が熱伝導率がよく、焦げ付きが鉄に比べて少ないことから、銅版に変えたんです。弊社のたこ焼きのための銅板を作ってくれる会社を探し、特注しました」

 とはいえ、銅板にも難点があるという。

「鉄と比べると銅は柔らかいんです。鉄板だと焼く時に通常の千枚通しを使っても傷は比較的つきにくいですが、銅板は傷がつきやすい。そこで大阪のたこ焼き専門店が焼く時に竹串を使用されていたのを参考にして、弊社も銅板に傷がつきにくい竹串を使うようにしました。銅板は熱伝導率が高いため曲がりやすく、使用可能年数は一般的に鉄板と比べると少し短いので、少しでも銅板の寿命が延びるように工夫をしてコスト削減に努めています」

 焼き方にも工夫を凝らす。広報担当が続ける。

「たこ焼きは生地を流し込んでから焼き上がるまで20分ぐらいかかり、複数の銅板で同時進行で焼いていくのですが、竹串でひっくり返した後の最終工程で銅板がガタガタと振動するようになっています。振動によってたこ焼きが自分でくるくる回転して仕上げる仕組みで、上手に焼き上がるようになっています。粉の混ぜ方のレシピや生地の作り方、焼く手順・時間などを全店統一しており、日が浅い人でも上手に焼けるようにして100円で美味しい品質を実現しています」

次のページ:たこ焼きの部門単体でも利益が出ている

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