たこ焼きの部門単体でも利益が出ている
とはいえ、原材料値上がりの波が押し寄せる昨今、とりわけ、たこの価格高騰は著しい。総務省「小売物価統計調査」によると、2024年11月のたこの価格(東京都区部)は100グラムあたり534円と、今ではまぐろの価格504円(同年同月)よりも30円も高い。たこの価格は10年前よりも2倍近く値上がりしているのだ。
たこ高騰の影響を受け、たこ焼き専門店や祭り・イベントの屋台などでは値上げに踏み切るケースも相次ぐ。直近では、チェーン店「築地銀だこ」が2024年12月4日に価格を改定し、定番商品の「たこ焼(ソース)8個入り」は、テイクアウトが税込669円(値上げ前626円)、店内飲食が同682円(値上げ前638円)に値上げされている。
祭りなどの屋台でも「たこ焼き700円時代」に突入し、「庶民の味のたこ焼きが高級品になってしまった」と嘆く声が全国各地で上がっている。このような状況のなか、「ラ・ムー」「ディオ」の“100円たこ焼き”は儲けを出すことができているのだろうか。
「たこ焼きの部門単体だけでも利益は出ています。確かに、たこの値段はじわじわと上がっていますが、仕入れ担当が一生懸命、様々な仕入れ先を探したり、冷凍のたこも上手に組み込んだりと調達にも工夫をしています。
また、たこ焼き販売は弊社の一部門ですので、パクパクのたこ焼き用だけでたこを仕入れるのではなく、スーパーの鮮魚部門やお惣菜部門などで販売・調理するたこも一緒にセットにして大量に仕入れる形をとっていますので、全体的にたこの仕入れ値を抑えることができるのです」
たこ焼きには紅生姜、天かすなども入り、ソースの上には鰹節がかかる。たこ以外の原材料の仕入れもスーパーの仕入れとセットにしているため、同様に仕入れコストが抑えられるという。
「マヨネーズは別売りで小袋を税込10円で販売しています。昔はサービスで付けていましたが、原材料などの価格がかなり跳ね上がってきましたので、マヨネーズは別売りにし、たこ焼きの価格を保っています」
券売機にはマヨネーズ10円のボタンもあり、客が自分の好みに合わせて選択できるようになっている。
「100円にこだわり続けます」
たこ焼き1個1個に、たこが必ず1つずつ入るように手順もルール化されている。
「目視確認がしやすいように、たこを最初に銅板に入れるという順番が決まっています。生地を入れてからたこを入れるのが本来の作り方ですが、そうするとタコが生地に沈んでしまい、たこが入っているのかわからなくなってしまう可能性があります。入れたつもりになっていたり、2個入っていたりといったことを防ぐために、生地を流し込む前にたこを銅板に入れます」
たこ焼きへのこだわりの根底には、庶民の味を守りたいとの思いがある。
「ご家族で5パック、10パックを買って帰られるお客様や、『今日のお昼はたこ焼きにしよう』とたこ焼きを2パック買われるサラリーマンのお客様、学校帰りの生徒、学生のお客様もいらっしゃいます。お子様もお小遣いの中から100円玉1つでたこ焼きを楽しめます。お客様からは温かい応援の声もいただいております。これからも100円にこだわり続けます」
物価高が続く中、“100円たこ焼き”の存在感はますます増していきそうだ。
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取材・文/上田千春