中国が全面的にAI産業への支援を強化する方針
今年、この競争をさらに過熱化させそうなのが中国だ。
中央経済工作会議が12月11、12日に開催され、2025年の経済運営方針が明らかになった。今年の重点任務が9つ示されたが、最初に示された項目は「全面的に国内需要を拡大させる」であるが、次に示されたのが「イノベーションによる質の高い生産力を発展させる」である。さらに、その具体的な政策として最初に示されたのが「“人工知能(AI)+”行動を展開し、未来産業を育成する」という方針だ。ちなみに、この方針が示されるのは今回が初めてである。
中国政府は2015年から“インターネット+”行動を展開、インターネットによるイノベーションを進めることで経済社会を深く融合させたことで、“情報の孤島”問題は基本的に解決した。この幅広いインターネットの普及を基礎として今年からは、AIの発展を国家が進める科学技術イノベーションの核心としたのである。
AIの能力を決める要素は計算力(ハードウエア)、計算方法(ソフトウエア)、データの3つに大別されようが、米中間の競争力の差を規模の面から比較すると、ハードウエア、ソフトウエアの点で、中国は米国に後れを取っている。中国のこれまでのAI開発は、音声認識技術、画像識別・解析技術など個別の問題に対処する実用面を重視する形で主に進められてきたが、米国において計算方法の面で大きなブレークスルーがあり、“All in AI”の方向で全面的な開発競争が進んでいる。
計算力では、OpenAIを含めたマイクロソフトグループ、グーグル、メタをはじめとした米国大手は巨額の内部留保、キャッシュフローを持つ上、金融市場から潤沢な資金を調達できるが、その点で中国企業は劣勢に立たされている。
中国でもアリババ、バイドゥ、科大訊飛、テンセント、華為技術、海康威視、商湯科技をはじめ、多数の企業がAI開発を進めているが、計算方法の部分では米国企業の開発したモデルが基礎となっており、現状において計算方法におけるイノベーションといった点では中国は米国を追う立場だ。
今後中国は、大学、研究機関での研究テーマから、国家基金や、国家政策に基づく国有商業銀行を通じた資金投入の強化まで、全面的にAI産業への支援を強化するだろう。