中国では新しい産業を育成する際、まず、大規模な資金供給、徹底した規制緩和など全面的な政府による支援により発展を優先させ、その過程で問題が発生すればその都度それに対応するといった形が伝統的にとられてきた。最近のEV自動車産業の急速な発展が示すように、こうした官が民の活力を最大限引き出させるようなイノベーションの進め方がうまく機能しているからこそ、中国経済は不動産不況のような問題を抱えていても、依然として5%近い成長を続けることができている。しかし、AI開発においては、この成功体験こそが世界にとって大きなリスクとなるかもしれない。
イノベーションはある日、突然生まれる。AIが人類の知能水準を超えた次の瞬間、その差が大人と3歳の子供ほどに広がってしまう。そのようなことが起こらないよう祈るばかりだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。