夫婦で幸せな老後を迎えるための準備で重要なのが、「何をいつやるか」というタイミングである。「終の棲家」を決めるタイミングはどうすればよいのか。“終活博士”として知られる行政書士で終活アドバイザーの松尾拓也氏にアドバイスをもらった。
松尾氏は行政書士のほかファイナンシャルプランナーやお墓ディレクター1級、相続診断士など多数の資格を持つ終活博士。昨年6月に上梓した著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)が版を重ねてベストセラーとなっている。
最後まで自宅で暮らすか、あるいは介護施設に入居するか。「終の棲家」を決めるタイミングについて、松尾氏はこう話す。
「住まいに関しては選択肢によって適切な年齢が異なります。例えば一軒家からマンションへのダウンサイジングや地方移住など、引っ越しをする場合は子供の独立がひとつのタイミングです。遅くとも65~70歳までに行ないましょう。70代以降に新たな土地に住んで、一から周囲と関係性を築くのはハードルが高い」(松尾氏。以下「 」内同じ)
その後、自宅に住み続けるか高齢者施設に入所するかの選択がやってくる。
「70歳の時点で、『5年後の自分』を想像してみてください。今はまだ不自由なく生活できている人でも、持病や足腰を鑑みて、後期高齢者になる5年後はどうか自分の身体に問いかけてみる。そこで不安を感じたら施設入居を真剣に検討するタイミングでしょう」
施設選びは歩けるうちに済ませるのが重要だ。
「カタログの情報だけでなく、実際に見学に行くことが大切です。入居してみて『こんな施設だったなんて……』と後悔するケースがよくある。
最寄りの地域包括支援センターに行けば相談に乗ってくれるでしょう。住み慣れた自宅にこだわる高齢者は多いですが、現実には施設に入ったほうが生活の質が上がるケースがよく見られます。配偶者が倒れ、介護で共倒れしてしまうことも考えられます。健康状態にもよりますが、70歳を目安に一度、夫婦で施設の情報を集め始めてみると良いでしょう」