「103万円の壁」引き上げをめぐるサラリーマン減税が最大の争点になる、1月24日召集の通常国会。しかし、財務省・自民党税調幹部たちは、減税を阻止するべ暗躍していた──。【前後編の後編】
異例の“就任アピール”
国民民主党を率いる玉木雄一郎氏が要求した「103万円の壁」の178万円への引き上げについて減税の骨抜きに暗躍するのが税制の事実上の決定権を持つ自民党税制調査会だ。
歴代会長は「陰の財務大臣」と称され、現在の宮沢洋一・会長は財務官僚出身で103万円の壁引き上げに立ちはだかる「ラスボス」と呼ばれる。
税調メンバーには会長以下、副会長、幹事など34人の議員が並ぶが、「仕切っているのは会長、小委員長など『インナー』と呼ばれる9人。このインナーの非公式会合で税制が決められ、他は副会長でも相手にされない。党内で最も閉鎖的で不透明な組織」(税調副会長経験者)とされる。
新任の若手インナーのなかで頭角を現わしているのが、コバホークこと財務官僚出身の小林鷹之・元経済安保相だ。前回総裁選ではいち早く出馬に名乗りを上げて善戦。党内で若手の有力総裁候補として地歩を固め、103万円の壁問題でもインナーとして存在感を見せている。
税調を代表して「壁」の引き上げに反対する全国知事会の地方税財政常任委員長である河野俊嗣・宮崎県知事から提言書を受け取ると、「103万円の壁を178万円に上げることをそのまま単純にやれば当然、地方税収に大きな穴が開く。地方自治体の皆様はそうした税収を使って子育て支援を始め、さまざまなサービスを行なっているなかで、この地方の財源はしっかりと考えて議論を行なっていただきたいと、そういうお声をいただきました」と知事会に理解を示し、テレビの「インナー密着取材」を受けたり、自身のXでも、「税調インナー会議の後、地元から国会見学に来てくれた小学校の皆さんとお話」と投稿してインナー就任をアピールし続けた。
「インナーの非公式会合は日程もクローズドが常識だが、小林氏はインナーとしての活動をことさらアピールしているのが異例です。発信力のある玉木氏に対抗する役割を内部で期待されているのでは」(自民党関係者)
実際、自公の税調協議で引き上げ幅を123万円に値切ることを決定すると、ネット番組に出演してこう説明した。
「178万円というのは30年前と最低賃金を比較した数字。自民党がたどり着いたのは123万円。なぜ123万円かをざっくり言うと、30年間で物価は1割上がっているが、生活必需品は2割上がっている。(それに合わせて)基礎控除を2割上げれば123万円になる」(「ニッポンジャーナル」2024年12月25日配信)