文系であっても「数学を必須化」する理由
こうした入試制度改革の背景を、早稲田の学長・田中愛治氏が日本経済新聞(2023年9月5日)で述べている。特筆すべきは文系学部入試における「数学の必須化」だろう。
田中総長は「早稲田大学も長年、文系と理系を分けて難解な入試問題を出してきた過去を持つだけに、大学入試が高校生に文理を分けて学習するよう強いてきたことに責任の一端を感じる」と反省する。そうした認識のもと、早稲田大学の受験制度は、文理分断を克服し文理横断教育を推進する方向に向かっているようだ。
田中総長によれば「現在の日本の入試制度は文系と理系を分けて学習を強いる構造となっており、それが教育全体の偏りを招いている」「文理分断がDXの遅れや政策の非効率性につながっている」という。早稲田大学では数学必須化や共通テスト利用を進めることで、文理融合を志向する受験生を取り込もうとしているのだ。
「(今の日本に必要なのは)自分の興味のあることを真剣に学ぶ動機づけをし、正解が定まっていない未知の問題への解決策を自分の頭で考えることを促す教育である。そのためには、偏りなく学問の基礎を修める必要がある」と田中総長は指摘する。偏りのない基礎を固めること、これが文系であっても早稲田が数学を必須化する理由だ。論理的思考、読解力には一定の数学力が必要であり、古い世代が早稲田入試に持つ「暗記をしておけば合格できる」というイメージの入試とは根本的に違うものになっているということだ。今後、そうした能力を持った早稲田の卒業生たちの活躍が期待される。