石破茂首相は年頭会見で「『令和の日本列島改造』と位置付け、『地方創生2.0』を強力に推し進めてまいります」と語ったが、2014年12月から始まった「地方創生」は、なぜ10年経っても目立った成果をあげられないのか? 内閣官房に新設された政府有識者会議の委員でもあるジャーナリスト・河合雅司氏は、その要因が大きく3つあるという。第1は人口減少に正面から向き合わなかったこと、第2は東京一極集中の是正に過度に期待したこと、第3は地方創生の「地方」の意味を地方自治体でとらえたことだ。
その反省を踏まえた上で、「2.0」ではどう変えていけばいいのか──。河合氏が今後取り組むべき具体策を提案する【前後編の後編。前編を読む】
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「地方創生2.0」は何をすべきなのか──。人口減少社会で求められているのは、人口が減っても経済を成長させることであり、少ない人手で機能する社会の構築である。地方創生とはこれを1つでも多くの地域で実現することだ。人口減少に耐え得る国土形成であり、国のカタチの作り替えである。
前編記事で述べた3つの失敗要因(現実味のない目標設定、「東京一極集中」批判、地方創生への誤解)に共通するのは、現状維持の発想である。現状を変えるとなれば痛みを伴うことになる。抵抗も強まろう。このため、政府・与党はこれまでこうした根源的な地方創生政策を避けてきた。だが、急速に人口が減り行く日本では「現状」は続かない。追い込まれて変わるより、余力があるうちに進んで変化に挑んだほうが痛みは小さくて済む。
すべきことを具体的に2点挙げよう。1つは各地に人口集積地をつくることだ。大都市から地方への流れをつくることもよいが、その前にそれぞれの地域で人口を寄せ集めることにもっと力を注ぐ必要がある。
居住エリアが膨張しつづければ、物流1つとっても多くの人手が必要となる。
問題は、それだけではない。人々がバラバラに住み、地域の消費者数が減ってしまうと、生活に必要な商品やサービスを提供する事業者が経営的に成り立ち得なくなる。各種事業が立地するには最低でも30万人程度の商圏(生活圏)の形成と維持が必要とされる。
30万人商圏を形成するためには、街づくりの思想を根本から改める必要がある。郊外に街を広げる従来の大規模開発の発想とは決別しなければならない。それよりも、既存の市街地を“より便利な場所”へと再生する視点が重要となる。コンパクトな街づくりだ。
人口を集約するには、30万人商圏の内側で二地域居住をすることも有効だ。二地域居住をめぐっては、政府内では「大都市」から「地方」への人の流れをつくることに懸命だが、ここも発想の転換が求められる。