政府の有識者会議でも議論しているが…
ここまで反省すべきポイントと進むべき方向性を述べてきたが、「地方創生2.0」が人口減少後をにらんだ勝ち筋に向かっているかといえば、残念ながらそうした姿はまだ見えてこない。
石破政権は2025年度予算案で地方への交付金を2000億円に倍増させる方針だが、全閣僚で構成される「新しい地方経済・生活環境創生本部」(本部長は首相)が2024年末にまとめた「地方創生2.0の基本的な考え方」を見ると、「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創設」や「東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散」などの文言が並んでいる。これまでの延長線だ。
内閣官房に新設された政府の有識者会議「新しい地方経済・生活環境創生会議」には、私も委員として参加しているが、人口減少に対応するため社会の根本的な作り替えを唱える私のような意見はいまのところ少数派だ。
「地方」を代表する委員が多いこともあってか、関係人口を増やすために居住地以外の自治体へ「ふるさと住民」として登録する制度の創設や、若者や女性の都会流出の要因をアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に求め、その解消に向けて働きやすい職場環境の整備に取り組むべきといった“目先の改善策”との印象を受ける提案が多く聞かれる。
人口減少が先行している地域では、とりあえず足元の対策を優先せざるを得がないということなのだろう。こうした提案を全否定するつもりはないが、これまでの政策の改善を求めるアイデアで足踏みをしていたのでは、日本は人口減少のスピードに追いつけなくなり、やがて大都市を含むすべての「地方」が沈むこととなる。