ロシアが獲得したシェフチェンコ・リチウム鉱山
もう一つの事件はロシアのウクライナ侵略によるリチウム鉱資源の獲得だ。ロシア・スプートニク社が1月6日に伝えたところによれば、ウクライナ・ザポリージャ州の親ロシア派幹部であるウラジーミル・ロゴフ氏によれば「ロシア軍はドネツク州西部に進軍、ゼレンスキー政権が軍事的に占領してきた国内最大のシェフチェンコ・リチウム鉱山を制圧した。ウクライナはいかなる採掘もできなくなっており、ロシアがこれを経済的に利用することが可能となった」などと発言している。
シェフチェンコ・リチウム鉱山は欧州最大規模である。地下500メートルの深いところに鉱床があり、厚みは70~130メートル、推定埋蔵量は1380万トン。ソ連時代からこの地にリチウム鉱床があることが知られていた。専門家によればこれはEUにおける2050年までの需要に相当する額である。
リチウム資源は、ウクライナだけでなく、EU、米国にとっても重要資源である。昨年12月のニューヨーク・タイムズ、ワシントンポストなど米国メディアによれば、ゼレンスキー大統領は、天然ガス、リチウム鉱床の開発に関して米国企業の参加を求めることで、トランプ次期大統領(当時)から引き続きウクライナへの支援を引き出そうとしていた。シェフチェンコ・リチウム鉱山の開発権については英国に売却していたこともあり、ウクライナにとって、今回の大規模リチウム鉱床の喪失は大きな痛手となりそうだ。
非米国同盟国側に重要資源が偏って存在する状況
もっとも、現在のリチウムの需給について調べてみると、需要は伸びてはいるものの、足元ではその伸び率はやや鈍化しているようだ。一方で、グローバルでリチウム金属メーカーが積極的に開発を進め、供給量を増やしてきたために、需給はむしろ大きく緩んでいる。
前述業界最大手の江西カン鋒リチウム(香港上場)の株価(修正株価)をみると、2021年9月の高値129.926香港ドルを天井に下落トレンドを形成、2024年7月には安値14.92香港ドルを記録している。その後、株価はリバウンドしたものの、上値は重く、2025年1月20日の終値は21.4香港ドルで引けている。
株価低迷の要因は業績の悪化だ。金属リチウム・化合物、リチウム電池の価格低下を生産量の増加で補いきれず、補助金の減少も加わり、2024年12月期の業績見通しは4割程度の減収、4億元程度の赤字転落と厳しい。