「お風呂でご飯食べながらゲームしてる」
つい最近、30代前半の既婚女性の離婚相談にのったことがあるのよ。けんかの原因の1つが、5才年下の夫が2才の息子にタブレットを預けて、ゲームを好き放題させていること。「2才の子にタブレットなんて!」と私も母親に同調したけど、そのパパは「いまどきは0才児向けのゲームもあるし、早い時期からタブレットを持たせた方がいいよ」と平然としているんだって。
そのときは、「タブレットは視力低下につながる」とか「脳に刺激がありすぎる」という言葉が喉元まで込み上げたわよ。それをギリギリ言わなかったのは、振り返れば私たちも「テレビを見ると目が悪くなる」とか「漫画を見るとバカになる」と言われて育ったから。時代が変わっても、若い連中に物申したくなるのは一緒なのかも、と思ったからよ。
で、結局、離婚寸前までいった若夫婦は元のさやに収まって、いまは息子のお受験のために共同戦線を張っていて、私の出る幕はなくなった。それはともかく、T子が「マジ無理」というさっきのタイパの話の続きだ。
「なにせ、私の会社の後輩は、『お風呂でご飯食べながらゲームしてる』って言うんだよね。浴槽に設置するトレーまで市販されているらしいから、風呂・食事・ゲームをまとめてこなすことはZ世代では珍しくないのかもよ」と笑う。
まぁ、聞くだに呆れるしかないけど、思えばZ世代とやらが世に出だした数年前からだよね、それまで当たり前と思っていた習慣やルールが崩れ始めたのは。
電車の中で、明らかに若い人が妊婦や体の不自由な人、年配者に席を譲る気配がまったくなくなったんだわ。前からそうだと言われるかもしれないけど、譲ろうとする人をまったく見かけないというのは異常だよ。
変化はそれだけじゃない。私は自分より座席が必要と思われる人が前に立つと席を譲るけど、「あんたに譲られるいわれはない」と言わんばかりの後期高齢者が増えている気がする。
そうか。「どうぞ」「ありがとう」なんて会話を望んだ私が悪いのかもと、それからは黙って席を立って、次の駅で降りて別の車両に移っている。そして、横に立っていた若いお兄さんにぶん取られていないか隣の車両からそっと見ると、座ってほしい人がちゃんと座っていたんだよね。自分のことしか考えない効率第一主義のZ世代のように思うけど、年寄りを押し退けて座席を占領するほど悪たれじゃないんだなと、このときばかりはちょっとホッとしちゃった。
オバ記者こと野原広子さん
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2025年2月6日号