プロスポーツのチームには熱心なファンがいるが、少し色合いが異なるのが学生スポーツ。在校生やOBが母校を応援したり、親が子供が通う学校を応援するのは分かるが、そうではない“部外者”が特定の学校を応援するケースもある。野球界のスーパースター・イチローが引退後、出身校ではない智弁和歌山高校の野球部に入れ込み、自分の野球チームに「KOBE CHIBEN」と名付けたのは野球ファンの間で有名だが、母校でない学校を応援する理由は何なのか? それぞれの事情を探った。
キャンパスが近くて、部員たちが挨拶してくれる
亜細亜大学出身のHさん(70代/男性)は箱根駅伝の大ファン。亜細亜は箱根駅伝で優勝経験がある名門だが、Hさんは中央大学の大ファンだ。理由はシンプルで「キャンパスが近いから」。毎年1月2日と3日は、テレビの前で懸命に中大を応援している。
「昔、陸上部の寮が近所にあって、部員たちがよく挨拶をしてくれたんです。息子や娘、甥や姪に中大OBは1人もいませんが、応援するのは断然中大。正月は我が家に集まって箱根駅伝を見ますが、早稲田出身の息子には毎年、『オレの学校を応援しろよ』と言われています」(Hさん)
都内の女子大出身のFさん(50代/女性)も似たような理由で、箱根駅伝では国学院大学を応援している。
「10年ほど前から毎日、多摩川の土手をジョギングしていますが、ものすごいスピードで駆け抜けていく一群がいて、やがて国学院の駅伝選手たちだと知りました。一度も声を掛けたことはありませんが、いつも頑張っている姿を見ているので、自分としてはすっかり母親気分。今年は箱根駅伝の沿道まで応援に行きました」(Fさん)
故郷を離れたことで俄然、郷土愛に目覚めたのはIさん(40代/男性)だ。宮城出身のIさんは、高校野球の地元強豪校を熱狂的に応援している。
「地元にいた時はちっとも興味が無かったのに、就職で東京に来たら、甲子園の地元代表の結果がすごく気になるようになったんです。特に思い入れがあるのは仙台育英。高校野球ではどうしても優勝旗が白河の関(福島県)を越えず、甲子園優勝は東北人の悲願でしたが、仙台育英は何度も惜しいところまで行き、気付けば大ファンに。2022年に決勝まで進んだ時は仕事を休んで現地に行き、優勝した瞬間は泣きました」(Iさん)