お客様から「ここができてよかったという声
実は、もともと非喫煙者だったという宮本さん。喫煙者と非喫煙者の双方の気持ちが分かるからこそ、宮本さんは「いまの社会に必要なのは、場所を作ることだと思います」と語る。
「もちろん望まない受動喫煙は避けるべきですが、だからこそ喫煙者も周りに迷惑がかからないような場所で吸えば問題ない。街中に吸える場所がないから、路上喫煙したりポイ捨てしたりする人が出てくるんでしょう」
店外の看板には「全席喫煙OK」の文字が書かれており、「喫煙目的店」であることを告知する大きなのぼりも掲出されている。そのおかげで、入店する人は「この店は喫煙者がいる」ことをそもそも承知しているため、受動喫煙に関するトラブルは4年半の営業期間で“ほぼゼロ”。内装や料理にこだわった居心地の良さが評判を呼び、最近では、非喫煙者の客も増えているという。
「『Lighters』は、愛煙家の方やタバコの煙が気にならない方だけが利用するお店。タバコが苦手な人に迷惑かけない営業を心がけていることを理解してもらえたらと思います。どんな人も気持ちよく暮らせる社会になることを願います」
そう話す宮本さんには、『Lighters』をオープンしたことで得られた特別な経験があったという。それは「お客様から『ここができてよかった』という声をいただいたこと」。
「シェフをしていると『美味しかった』とか『また来ます』と言われることはありますが、“場所”に感謝されたのは初めてです。これは一般の飲食店だとあまりない感覚かなと思います」
改正健康増進法が施行され、分煙に対応できない昔ながらの喫茶店はその多くが全面禁煙に踏み切り、喫煙者の居場所が激減したのも今は昔。もはや喫煙・非喫煙に関係なく、カフェ難民が発生するといわれる都心の片隅で、宮本さんはタバコ文化の“火”が消えぬよう、愛煙家の居場所を守っている。