2025年4月から大阪・関西万博が開催される大阪府では、同年4月に「大阪府受動喫煙防止条例」が施行される。それに先駆け、大阪市は市内全域で1月27日から路上喫煙禁止をスタートした。万博や五輪などの世界的イベントがあると喫煙に規制がかかるのは通例で、東京都も東京五輪にあわせ、2020年から東京都受動喫煙防止条例により、飲食店は原則全面禁煙と定められた。
時代のあおりをうけ、街中でタバコを吸える場所がどんどん消滅するなか、大都会・渋谷に“全面喫煙”を謳ったカフェがある。渋谷駅から徒歩約10分、『SMOKE & CAFE Lighters』(以下、Lighters)だ。店主・宮本達矢さんに、この時代に“タバコが吸えるカフェ”を営業する事情を聞いた。
「分煙だと結局“分断”になってしまう」
『Lighters』がオープンしたのは、東京五輪閉会直後の2021年8月。コンサートホール『LINE CUBE SHIBUYA』がある公園通り沿い、『スターバックスコーヒー』や『サンマルクカフェ』などが立ち並ぶ“カフェ激戦地”のど真ん中に位置している。なぜこの場所にオープンしたのか。宮本さんが語る。
「ここ数年、喫煙可の飲食店や公共喫煙所などタバコを吸える場所が減っているのは寂しいという気持ちが根底にありました。大手チェーン店は “分煙”や“全面禁煙”を推し進めていますが、分煙だと、結局“分断”になってしまう。個人店であれば“タバコ好き、あるいはタバコに理解がある人だけが来ればいい場所”を作れると思ったんです」(宮本さん、以下「」内同)
黒と白が基調となったスタイリッシュでシックな内装に、革張りのソファが並ぶ『Lighters』はタバコも販売していて、「シガー(葉巻)バー」などと同じ、「喫煙目的店」に分類される。大切にするのは、「お客さんが笑顔で楽しく利用できる“アットホームな店”」だ。
「このご時世、どのお店も料理のレベルは高く、料理だけで通ってもらうのは大変です。そんななか、『また来たい』と思ってもらうにはお店の雰囲気が第一だと考え、お客さんとのコミュニケーションを大切にする空間を目指しました」
タバコ規制が進むなかでの挑戦的な取り組み。その“調子”を聞いてみると、宮本さん曰く「コロナ禍もあり、開店後1年間はほぼ赤字だった」とのこと。
「お客さんが1組や2組の日もザラでした。それでも、日に日にリピーターの方が増え、最近では、週に4回以上来店する常連さんも多いです」