昨年大晦日の「第75回NHK紅白歌合戦」サプライズ出演を機に、新たなファンを多数獲得し、快進撃を続けるロックバンドB’z。しかし、その一方でオールドファンの中には複雑な思いを抱く人もいるようだ。前編記事《「どこにアンチが潜んでいるか不安で…」紅白効果でB’zが大フィーバー、オールドファンが明かす「ファンだと公言できなかった」苦悩の日々》に続いて、デビュー時からのB’zファンだという50代男性が「やっと行けるようになった」ライブ参戦の様子や、現在のB’zフィーバーで心配している点などについて明かしてくれた。フリーライターの池田道大氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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2021年9月29日、B’zのデビュー時からのファンである田中隆史さん(仮名・50代)は満を持して、ファンクラブ先行抽選でチケットを入手した「B’z presents UNITE #01」の横浜アリーナ公演に向かった。B’zが主催し、GLAYとライブ初共演するイベントで、コロナのため客数は2000人程度、マスク着用のうえ、声出し禁止という制限があった。
熱烈なファンになって30年余り。ようやく松本孝弘(63)のギターと、稲葉浩志(60)のボーカルが織り成すB’zのライブを生で見る機会が訪れたが、最初に耳に入ってきた曲は望んでいたものとは違っていた。
「この公演はGLAYとB’zの対バンで、最初にGLAYが10曲ほど演奏してからB’zがステージに登場してGLAYと一緒に演奏するスタイル。その時に演(や)ったのはGLAYの3枚目のシングル『彼女の“Modern…”』でした。つまり僕は初めてステージに立つB’zを生で見たけど、彼らが熱唱したのはGLAYの曲だったんです」(田中さん・以下同)
それでもリアルな2人を目に焼き付けようと、ステージを凝視した。“松本推し”の田中さんは、ギターを弾く松本の手をじっと見つめた。
GLAYとの共演の幕が閉じ、待ちに待ったB’z単独のライブがスタート。だがこの時も思いがけない誤算が生じた。
「2人が登場する前に会場を温めておこうと思い、GLAYのステージで一生懸命飛び跳ねていたら、B’zのターンで体力がほぼなくなってしまった。最後から2曲目が『ultra soul』でしたが、『ウルトラソウル!』『ハイ!』で観客がジャンプするお決まりのシーンでいざ跳ぼうとしたら疲れで体が宙に浮かばず、チョコンとつま先立ちになりました(苦笑)。その後も何回かチャレンジしたけど結局、跳べなかったのが心残りでした」