オールシーズンタイヤの苦手項目「凍結路」を克服する新技術を搭載したダンロップ「シンクロウェザー」。雪国の日常でも十分に通用するパフォーマンスを示している
晴・雨・雪・氷、すべての路面で使える理想のタイヤが求められる理由
こうした夏タイヤとスタッドレスタイヤの「両方の特性を融合させたタイヤ」として開発されたのが全天候型の「オールシーズンタイヤ」です。夏季のドライ&ウエット路面から、冬季の圧雪&凍結路まで走行できるスタッドレスタイヤと比べれば、ドライ路面でステアリング操作に対するレスポンスも良好で雨天でのブレーキも効くし、走行ノイズも低い。さらに国際基準であるASTMインターナショナルによる冬用タイヤの規格を満たしたことを証明した「スノーフレークマーク」があれば、雪道走行も可能。当然ですが「それほどマルチに対応できるなら、最初からオールシーズンにすればいい」となります。なにより、年間を通して1セット(タイヤ4本)で済みますから、スタッドレスタイヤを保管する場所も、さらにはタイヤ交換の手間や費用も不要です。
ところが、事はそう簡単ではありません。一般的にオールシーズンタイヤはドライ路面でも雪道でも使用できるオールラウンダーではありますが、「妥協点」を求めた結果のタイヤとも言えるため、夏タイヤとしても冬タイヤとしても“少しだけ物足りなさ”を感じるのです。気になる冬タイヤとしてですが「スノーフレークマーク」が刻印されていれば圧雪路を問題なく走れます。一方でJAFのテストによれば、つるつるのスケートリンクのような試験用の氷盤路では、時速40kmからの制動(ブレーキング)で停止するまでの距離は「スタッドレスタイヤが78.5m」、「オールシーズンタイヤが101.1m」、「ノーマルタイヤが105.4m」でした。オールシーズンタイヤの場合は「夏タイヤとあまり変わらない」という結果だったのです。凍結路では「推奨せず」、あるいは「走行NG」になっていることが理解できます。
以前、オールシーズンタイヤを装着して、長野県の志賀高原にある標高1500mほどの「丸池スキー場」へ向かって、厳冬の国道292号線を走ったことがありました。雪のないシーズンであれば、上信越道の「信州中野IC」から国道292号経由で約25km、時間にして40分ほどの距離です。ところが雪が降り積もり、凍結する冬期はそうはいきません。
高速を降り、標高350mほどのインターチェンジ周辺は除雪された圧雪路でした。しかし標高が高くなるにつれ、路面状況も圧雪路から凍結路へと変化。10kmほど走り、標高560mほどにある「道の駅・北信州やまのうち」の手前になるとトラクションが時折抜ける感覚に不安を感じるようになったのです。そこで道の駅の駐車場に入り、持参したプラスチックチェーンを装着。この時点ではまだ道路は圧雪路でした。しかし、標高が約1500mにあるスキー場に向かうとなれば、確実にこの先は凍結路ですから、チェーン装着はこの時点でも遅かったかもしれません。なにより凍結路が予想される状況へ“テストを兼ねていた”とは言え、オールシーズンタイヤで向かったことを反省。「やはり使用状況も限定的だし、本格的な雪国ライフをオールシーズンタイヤだけで過ごすのは無理」と再確認。帰京後はすぐにスタッドレスタイヤへと戻し、冬期の取材や移動に対応してきました。