暖冬と言われながらも、雪とはあまり縁のない地域でも降雪の可能性は十分にある。クルマを運転する際に、積雪となれば、安全走行のために確実にタイヤチェーンなどの滑り止めを装着する必要が生じる。滑り止めの選択として、最近注目されているのが被せるだけの“手軽な装着性”と場所を取らない“収納性の良さ”が売りの「布製チェーン」だ。最近では提供メーカーも増え、品質も値段も多様で選択の幅は拡がりをみせている。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏がその布製チェーンを雪上テストし、結果をレポートする。
「緊急用」として認められて注目度もアップ
今回、雪上ドライブで使用したのは2019年12月から日本でも発売しているスペイン製「ISSE(以下、イッセ)スノーソックス」。軽量にしてコンパクト、取り付けやすいといった布製ならではの特性を持ちながら、圧雪、深雪、アイスバーンはもちろん、水分の多い日本の雪路やシャーベット状の路面でも十分に性能を発揮できることを謳って登場しました。
「軽自動車から大型トラックまで」と幅広いサイズを揃え、その上で「金属チェーンに匹敵する圧倒的なグリップ力をほこる」とメーカーは自信を見せています。
布製チェーンのパイオニアは2000年に欧州で発売が始まったノルウェーの「AutoSock(以下、オートソック)」です。布製の滑り止めという世界初の革新的な製品として注目され、その後、日本にも登場しました。当初は、フェンダーとタイヤの間の狭さやサスペンションの構造上、厚みのある金属製チェーンやプラスチックチェーンなどを装着できない(しにくい)輸入車オーナーなどが、薄く手軽な装着性ということもあり、「緊急用」としてトランクに準備していることが多かったようです。
たしかに降雪が年2、3回程度という東京での生活を考えれば、日中に予想外の降雪があっても、仕事場から無事に帰宅できるだけで十分です。さらにコンパクトで軽量、ジャッキ不要で一輪あたりの装着タイムは3分程度、という手軽さは大きな魅力。認知度の上昇とともに降雪の可能性の低い地域での普及も進みました。
一方で、雪上性能への懸念は常にありました。雪や凍結路面に直接食い込んでトラクションを得る金属製やプラスチック製などのチェーンは理解しやすいですが、特殊繊維で編み上げられた布が雪面にしっかりと密着してタイヤのグリップ力を高める、と言われてもなかなか信じられないのも当然かもしれません。
しかし、そんな流れが一変したのは2018年の国土交通省による「チェーン規制」に関する発表でした。ここで「布製チェーン」が、金属製チェーン同様に規制時での装着が認められたのです。性能について一種のお墨付きを得たわけですが、そんな流れに合わせて日本に上陸してきたのが今回取り上げた「イッセ スノーソックス」です。オートソックに加え、スノーソックスがヨーロッパから登場したことで布チェーンの認知度は一段と上がりました。